パナソニックの新型ゼオルトS5&L3を見てきた、乗ってきた

パナソニックの新型ゼオルトS5&L3を見てきた、乗ってきた

パナソニックサイクルテックから発売されているeバイクの「XEALT M5(ゼオルト エムファイブ)」は、扱いやすさを重視したフレームの設計や、強力かつ自然でスムーズなアシスト性能を持つドライブユニットなどで構成されたeMTB。自力で走るには厳しいと思うルートにも自信を持ってチャレンジできることから、ペダルバイクからの乗り換え派だけでなく、自転車趣味の初心者まで幅広い層に選ばれる1台となっている。

ゼオルト・M5
パナソニックサイクルテックのeMTB「XEALT M5」。幅広い層に扱いやすい特性のスポーツモデル。メーカー希望小売価格は46万2000円

このXEALT M5は2022年4月に発売されたモデルであるが、約1年経った2023年にXEALTシリーズとして2モデルを追加する。それが7月上旬発売予定の「XEALT S5(ゼオルト エスファイブ)」と6月上旬発売予定の「ZEALT L3(ゼオルト エルスリー)」だ。

これらの新モデルを紹介する前にXEALTシリーズすべてに共通する特徴を紹介しておこう。

パナソニックサイクルテックと言う企業は誰もが知っているパナソニックグループの一員である。それだけに「品質」や「性能」などについての決まりごとはパナソニックゆえの厳しさがある。
そうしたことから新型車を企画しても安全なのか、安心して使えるものなのかなどの検討が何度も行われるという。それだけにパナソニックサイクルテックでは簡単にラインアップを増やせないのだ。
でも、裏を返せばパナソニックサイクルテックのeバイクは、それだけの品質へのこだわりがある「超優等生」な製品ということ。
そんな環境のなか、登場したXEALTシリーズ、日本製らしい高品質なeバイクが欲しいと思うのならベストバイと言えるものであるというわけだ。

ゼオルトのグリップ
パナソニックサイクルテックが販売するeバイクでは、自社で製造する部分はもちろん、グリップひとつ取っても社外から調達する部品についても品質へのこだわりは強く、環境に優しい素材が使われていることなども社内基準にあうものだけを使用するという

XEALT S5(2023年7月上旬発売予定)

ゼオルト・S5
スポーツユーティリティモデルのXEALT S5。カラーは写真のレーザーブルーのほか、メタリックグレーを設定。メーカー希望小売価格は36万8000円

では、新たに追加されたXEALT S5とXEALT L3を試乗した印象を交えた紹介していこう。
まず、XEALT S5だが、こちらは「街へ郊外へさまざまなフィールドへ外遊びの幅を広げる」ことをコンセプトとしている。
フレームサイズは390mmと440mmを設定。重さは390mmが25.4kg、440mmが25.5kgとなっている。
フォルムはeMTBのM5同様、バッテリーが格納される太いダウンチューブは特徴的な形状だが、トップチューブやシートステーをストレート形状とすることでスポーティと言うより洒落た感じに仕上がっている。また、フロントライト、前後のアルミ製フェンダー、それにリヤアルミ製キャリアを標準装備しているところも特徴だ。なお、オプションでリヤキャリヤ用パニアバッグも用意されているので、スタイリッシュに積載性をアップさせることもできる。

S5のダウンチューブ
ダウンチューブにバッテリーが格納されるので、ダウンチューブ自体に補強のための作り込みもされている。それらのために独特なデザインとなっている。バッテリー容量は13.0Ahで充電時間は約5.5時間
S5の充電口
バッテリーは取り外しもできるが装着したままでの充電も可能
S5のリヤフェンダー
前後にはアルミ製フェンダーを装備。リヤにはアルミ製キャリヤも付く。なお、耐荷重的にチャイルドシートの取り付けは不可だ
S5のキックスタンド
街乗りでは欠かせないキックスタンドも標準装備。取り付け部分の作りやスタンド自体のデザインはスマートなので野暮ったい印象はない

タイヤは街乗りに適したパターンでサイズは前後とも27.5×2.0と、太めのスリックタイヤを採用している。ホイールサイズは29インチを採用する例もある。これは走破性に優れる反面、大径ゆえにスポーツバイクに不慣れな人や小柄な人には扱いにくさを感じさせることが懸念される。そんなことからXEALT S5は体型が小柄な人でも取り回しやすく、扱いやすいことを狙って27.5インチを使っているのだった。

ギヤは外装の9段変速でドライブユニットはパナソニックサイクルテック製、スポーツeバイク向け設計のGXドライブユニットを搭載している。こちらのユニットはコンパクトで軽量な(2.95kg)ながら、90Nmのトルクを持つもので、モードは「ハイ」「オート」「エコ」の3つの設定。各モードの走行距離はハイで約75km、オートは約99km、エコでは約139kmとなっている。

S5のフロントタイヤ
タイヤは前後ともに27.5インチ。ブレーキは前後ディスクブレーキだ
S5のドライブユニット
ドライブユニットはパナソニックサイクルテック製のGXドライブユニット。ユニットの重量は2.95kg。トルクは90Nm
S5のリヤディレーラー
マウンテンバイク向け、9スピードのシマノ・ALIVIO(アリビオ)を採用している

では、XEALT S5に乗った印象だ。大柄な車体に25kgという車重だけに重さを感じるものかと思って少々身構えたが、ドライブユニットはもちろん、インチューブ化されたバッテリーといった重さのあるパーツを可能な限り低い位置にセットしているので、押し歩きでもとくに「重い」とは感じない。
走行中に関してはアシストがあるのでなおさら車重を感じることはない。今回は街乗りでの試乗だったのでアシストモードは「オート」から試したが、走り始めや信号からのスタートでは「これぞアシスト!」という力強い動き出しが体験できた。トルクの立ち上がりは強めの印象だったので、坂道の途中での停車からの再スタートも涼しい顔でこなせるだろう。

S5のディスプレイ
XEALT S5にはカラー液晶ディスプレイ&操作スイッチを採用。選択中のアシストモードはディスプレイ右下に表示、▲マークキーで切り替える
S5のディスプレイ
バッテリー残量と走行可能距離の表示。時速&平均速度、トリップ&オドなど同系の情報は2段表示
S5のディスプレイ
一生懸命漕いでいる最中にチラ見するようなケイデンスは見やすさ重視の表示となる

試乗コースにはダラダラと続く上り勾配の区間があったがここでは「オート」や「ハイ」「エコ」を順に試してみた。
ペダルへの踏力が強い状況では「オート」と「ハイ」の差はほとんど感じられず、終始力強いアシストが得られて上り勾配の区間ながら加速させることも容易だった。
こうした特性は1日かけて走るようサイクリングにおいて身体の消耗を抑えてくれるものであるし、ふだん乗りでも信号待ちや一時停止のほか、クルマや歩行者を避けるため減速したり止まったりすることがあっても、容易に元のペースに戻せるので、結果的に安全運転につながるモノだと言える。
そして「エコ」にするとペダルにしっかりと踏みごたえが出る。効率を考えたら上り区間では使わないモードだろうが、eバイクといえども体作りの意味でも乗りたい人にとってはトレーニング的にも使えるモードなので、サイクリングではない、ふだんの走行ではあえて「エコ」縛りで乗るのもいいだろう。
ちなみに上り区間の途中でアシストをオフにしてみたところ、勾配を上る走行抵抗だけでなく車体の重さも感じた。

ハンドリングや乗り心地ついてだが、フレームの設計や重量配分、そしてタイヤサイズ設定などからか直進安定性が高いと感じた。試乗コースには若干舗装が荒れたところや砂が溜まっているところもあったが、そうした状況でも安定感があったのは好印象。XEALT S5は「軽く走るが実は重量がある」というモデルだけに、外乱に強い走行安定性の高さは安心して乗るためにぜひ欲しい特性と言えるだろう。

S5のサドル
サドルはセラロイヤル製。横から見ると肉薄に見えるがお尻が乗る部分の幅が広い形状なので座った感じは楽

XEALT L3(2023年6月上旬発売予定)

ゼオルト・L3
XEALT L3。カラーはエアグリーン、ほか4色の設定。タイヤサイズは700×38C。メーカー希望小売価格は19万5000円と20万円を切る価格が魅力だ

パナソニックサイクルテックのeバイクラインアップには「ジェッター」というブランドがあるが、今回それをXEALTブランドに統合。そして従来のジェッターブランドのポジションとしての設定されたのがXEALT L3だ。

XEALT L3は「スポーツライド体験をすべての人に。気軽に楽しめるライトスポーツバイク」というコンセプトのeクロスバイクで、価格が20万円を切っているのは大きな特徴。eバイク趣味を始めたいという人のほか、通勤や通学で毎日、それなりの距離を自転車で通う人にとっても魅力的な価格設定だ。
また、小柄な女性にも乗って欲しいと言うことからフレームサイズは身長148cmの人から扱いやすい390mmサイズを用意。そして標準サイズは440mm。フレームとフォークはアルミ合金製で重量は20kgだ。

L3のダウンチューブ
バッテリーはダウンチューブにセットする。取り外しも可能。容量は12.0Ah。充電に掛かる時間は約4時間。走行距離はハイモードで約45km、オートモードで約58km、エコモードでは約90km

XEALT L3のドライブユニットはパナソニックの電動アシスト自転車向けに開発された2軸式の「カルパワーユニット」となる。他のXEALT車に使う1軸式ドライブユニットのようにスポーツモデル向けではないが、1軸式に比べて構造がシンプルなので軽量に作れるというメリットもある。

とはいえ、たんにユニットを流用したのではない。電動アシスト自転車ではギヤ比の設定から高ケイデンス域はほぼ使わないので、その域のアシストは下げている。しかしライトスポーツバイクであるXEALT L3では高ケイデンス域も使用するので、電動アシスト自転車ではケイデンス60rpm付近から急激に落ち込んでいたアシスト力を、XEALT L3では約110rpmという高い域まで続くようにしている。

L3のドライブユニット
ドライブユニットはパナソニックサイクルテック製のかるパワーユニット。フロントギヤ駆動でなく、モーターとつながる小スプロケで駆動を伝える2軸タイプ
ドライブユニットの比較
1軸タイプと2軸タイプの構造の違い。XEALT L3では高ケイデンス領域のアシスト特性をスポーツ走行向けに最適化している
L3のドライブユニット
モーターとつながる小スプロケが見える角度で撮ってみた。スポーツモデル向け1軸式ユニットと比べると駆動効率は劣るが、構造がシンプルで軽量という利点がある

XEALT L3は車重が20kgとXEALT S5より軽いため、乗り比べたときには車体の軽さは実感できた。また、XEALT S5同様、XEALT L3も直進安定性がいいという印象。車道の端など舗装の荒れが気になる部分を走るときハンドルを持つ手に力が入ったり、意図的にバランスを取ろうとするような身体の使い方をせず安心して走りたいラインを進むことができた。
XEALT L3は車格的に通勤、通学などで幹線道路を走るような乗られ方をすることもあるかと思うが、そういったシーンでは走行安定性の高さは光る性能だと思う。

そして肝心のアシストだが、街乗りメインだった今回の試乗では力不足を感じる場面はなかった。XEALT S5のときと同じく、上り勾配の区間ですべてのモードを試してみたが印象はXEALT S5と一緒。何はともあれ「オート」にしておけば、街乗りにおいて「ペダリングが無理」と言うシーンはないと思う。
また、高ケイデンス域のフィーリングも試してみたが、たしかに高ケイデンス時にペダルの踏みごたえが急に出ることもなく、かなり速い足の動きまでアシストが効いていた。とはいえ法規としてアシストは時速24kmまでなので、この制御があっても加速力やトップスピードが速くなるわけではない。
ただ、上り坂などを一気に駆け上がるようなシーンでは高ケイデンス域までのアシスト性能は欲しいところなので、坂道が多いルートを走ることが多い場合においてはXEALT L3のマッチングがとくにいいのではないだろうか。

L3のディスプレイ
XEALT L3のディスプレイはモノクロ。数値のフォントは大きく太いので走行中にチラッと見るだけで数値が読み取れた
L3のディスプレイ
アシストモード切替などの操作はXEALT S5と一緒。表示は速度、アベレージ、最高速度、バッテリー残量、アシスト状態での走行可能距離、オド、ケイデンス
L3のフロントライト
XEALT L3及びXEALT S5ではハンドルマウントのフロントライトが標準装備
L3のディスプレイのボタン
ライト点灯のオンオフはディスプレイユニットのボタンで行う。メイン電源ボタンもここだ

以上がXEALTシリーズに追加される2モデル。趣味のeバイクとしても十分な所有感を得ることもできるXEALT S5。そして多くの人がeバイクを自転車の次の乗り物として選べる価格帯のXEALT L3は、従来の自転車趣味とは違った層への広がりを見せているeバイク界において多くの人に選ばれる存在感のあるモデルになるだろう。

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