スペシャライズドが、最新フルサスeMTBモデル「Levo SL Gen2」の発表試乗会を行った。第二世代『Gen2』となり高性能な新モーターを搭載したのが大きな変更面。ただ最も大きく感じたのはジオメトリーの変更、パウダースノーをボードで滑るような、流れるような乗り味だった。
第二世代「Levo SL Gen2」、車体としての特徴は
4月の中旬、 神奈川県小田原市の「フォレストバイク小田原」にて、スペシャライズドの新作発表試乗会が行われた。今回ここで発表されたeMTBは、これまでもラインに並んでいたLevo SL、その第二世代「Levo SL Gen2」である。
ここのところeバイクMTBに積極的なスペシャライズドが、軽量なフルサスeMTBとして評価の高かったLevo SLをどのような味付けに進化させたのかが興味深い。さっそくバイクを見てみよう。
裏から見ると、これがeバイクとは思えない見た目だ。わかってないとわからない。スペシャライズドのペダルバイク「スタンプジャンパー」とあまり変わらない。またGen2より前後ホイール設定がマレットになった。前は29インチホイール、後ろ27.5インチホイールが標準装備される。
早速乗ってみた。このバイクに乗ってペダルの上に立つと、後ろ側に重心がするりと入る。前輪が上げやすいのだ。下っている時は、その後ろにある重心の下で、リヤホイールがゆるゆると舐めるように路面をはう。この感覚はそういえば、パウダースノーの上をスノーボードで下っているかのようなフワフワ感だ。
そんな印象を、試乗会で一緒に乗ったスペシャライズド、往年のプロMTBライダー、マット・ハンター氏とそのクルーに伝えると、
「そうだね、乗った感じはパウダースノーをボードで切っていく感覚と同じ、パウダーバイクっていうのはいい表現だね」と返した。
軽量なLevo SLは、元々他のパワー系eMTBと比べてその軽さが際立っていた。走らせると気持ちいい乗り味だったが、最大パワーの弱さがコンプレックスだったようだ。少し前のeMTB開発担当へのインタビューでは、そういえばしきりにそれを伝えてくれた。
第二世代 Gen2になって、その最大トルクを上げた。最も大きな変更点である、新アシストユニット「SL1.2」でだ。この中にアシストユニットがあると言われると驚くぐらい小さいサイズはそのまま、出力を33%向上させて、最大トルクは50Nmに。これはかなりのアシストパワーで、今回の厳しい上りでもその威力を実感できた。
新アシストユニットの中身が展示されていた。ユニットは完全な新作で、これまでのものより大幅に静かになっている。これは内部にある歯車の構成を変更し、また各部にハニカム素材を使用することで、音を伝えにくくしたことによる結果だそう。
実際に乗っても確かにそうで、走る時にはアシストが効いているのか、音ではわからないぐらい聞こえなかった。自社開発のSマークが誇らしい。
さらにジオメトリーの変化も可能だ。リアエンド部やリヤサスユニット取り付け軸にある偏心アダプターを調整することで、BBハイトを変えられる。これにより、リヤホイールを29インチにして走ることもできる。
変速はリヤのみの、1×12速が基本となる。パーツのグレードはバイクのモデルによって変わってくる。以下の3モデルが日本のラインナップだ。発売は2023年5月5日より。価格は今どきとはいえ、ちょっと驚く。
LEVO SL Gen 2 S-Works Limited ― 198万円
LEVO SL Gen 2 S-Works ― 192万5000円
LEVO SL Gen 2 Comp ― 99万円
すべてのモデルがカーボンフレームとなるが、Compモデルではリンク部などがアルミ製。S-Worksではそれらもカーボン製となる。日本で展開されるサイズはS1~S5の5種類となる。
浮遊感のあるeMTB
筆者が今回乗ったのは、そのうちLEVO SL Gen 2 CompのS3サイズ。ラインナップ一番下のモデルとはいえ、重量は実測で18.5kgで、フルサスeMTB。しかもそのジオメトリーで前輪が上げやすく、さらに軽く乗れる感じがするのだ。
だから、こういうウネウネした地形の今どきのMTBパークがすごく気持ちいい。こういうところを下る時には、両足のペダルに立つものだ。すると重心が勝手に後ろに入って、リヤホイールが転がりやすいところに入っていく。
後輪の動きは何かに当たった時にふわりと添う。これがプレゼン時に言っていた「後輪軸が斜め上に動くリヤサスの仕組み」と「挙動を安定させるリヤサスユニットの自社チューニング」というやつだろう。
これは着地の時。この時のリヤホイールの安定感がいいのだ。ちょっとオーバーに飛んでしまっても、このリヤホイールがしっとりと粘る感じがいい。写真で見ても、サスペンションには余裕がありそうだ。
しかも蹴り出す時には体重をかけても安定してグイーンと加重して加速する。着地する時もそうである。
こういう広いところに着地していく時の、ふわーってグライドする感じ、滑っていく感じがいい。後ろに重心を置くと、後輪が下り斜面を滑り降りていく。それがいわゆるプッシュってやつである。それがしやすいバイクである。
走っている時にこう思った。「マウンテンバイクでしたいって思っていた走りを、そのまま実現できるバイクだな」。こういうフワッとしたところで、フワッと飛んで、と思うとそれができる。ダートジャンプとは違う、フワッとした、フロートレイルならではの走りである。
スペシャライズドは、こういう風に自転車を再解釈したのか、って思った。飛ぶたびに、重心をグッとリヤホイールにかけるたびに、この写真のマット・ハンターのようについ笑いが漏れちゃうeMTBなのである。
現時点における、最新のeMTBの走りを楽しめるバイクである。最後になるが、上りのアシストもバッチリだ。