静岡県富士市に残る歴史の史実をeバイクで巡るツアーに参加。参加者は鎌倉時代の史事を通して市の新たな魅力を発見。坂の多い地形もeバイクの走破性で年齢や体力を問わず、参加者全てが楽しめた。
歴史を軸に町の魅力をeバイクで体感する
富士市の社会福祉法人・誠信会は、歴史や文化のゆかりの地をeバイクで目指す「E-Bikeで巡る鎌倉幕府への道と曽我兄弟をたどる散走ツアー」を開催した。
開催日は2023年11月3日。eバイクはすべてレンタルだ。使ったのは、ツアーではミヤタのeMTB「RIDGE-RUNNER」、ベスビーのグラベルロードe-bike「JG1」「JGR1.1」。そして、近隣にある富士市サイクルステーションからのレンタルeMTBである。
集合場所である静岡県富士市中央公園を出発し、富士山かぐや姫ミュージアム学芸員の説明やランチを取りながら、約21kmの距離を約5時間かけてゆったり走るツアーだ。
ツアーのハイライトは次の4つ。
・源氏と平家との戦いの歴史: 鎌倉幕府設立に至るまでの平家との戦いの伝承や史実を探索
・富士山と湧水:富士山の麓の自然美と湧水を楽しむ
・曽我兄弟の仇討ち: 歌舞伎や演劇で人気のあった「曽我兄弟の仇討ち」の当時の聖地を巡る
・富士市の地形と歴史:富士市の文化的・歴史的背景についての学芸員の方からの説明があった
源氏と平家との戦いを振り返り、湧水を体感する
出発は富士市中央公園から。ツアー前半は、鎌倉幕府設立までの、平家との戦いにおける伝承や史実の跡をその当時の聖地をeバイクでたどる。
東海道を歩いていると、通常富士山は右側に見えるのに、ここだけは左側に見えるという「左富士」を見ながら「平家越え」へ。ここは源頼朝が、富士川の戦いで平家を打ち破った話が有名な場所。
伝説によれば、富士川を挟んで源氏軍と対峙していた平家軍、夜間に武田信義の軍勢が平家軍の背後に回ろうとした際、驚いた水鳥が飛び立ち、平氏軍は敵襲と勘違いして戦わずして敗走したとされている。
自転車でしか行くことのできそうもない小さな神社に立ち寄る。ここは NHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも知られる武将、和田義盛が頼朝の命を受けてこの付近に本陣を置いたとされる場所。以降土地の人々は和田義盛を守護神として祀っている。
富士山の麓にある富士市は、湧水が多いことでも知られる。富士山に降った雨や雪が富士山そのものに磨かれて、市内のそこここから湧き出しているのだ。そのひとつとして立ち寄ったのは鎧ヶ渕親水公園。ここは源頼朝が先の富士川の合戦に臨む前に鎧を洗ったとされる場所。
これらをひとつのストーリーとして体験できるのがこのツアーの特徴。東海道沿いで、歴史の長い富士市は、特にお寺付近の昔ながらの道は細く、富士山のふもとなので坂が多い。それでもeバイクのアシストとパワーで、スイスイとツアーは進む。
後半は鎌倉時代の聖地巡り、曽我物語の舞台を走る
ランチを食べた後、後半のテーマは「曽我兄弟の仇討ち」。当時が熱狂したその聖地を巡る。
富士市を鎌倉時代から有名にした理由がある。それは「曽我物語の聖地巡礼」だ。曽我兄弟の仇討ちは「曽我物語」として歌舞伎や演劇にもなり鎌倉時代に人気を博した。その聖地巡礼に当時は沸いたそうだ。
まずは富士山かぐや姫ミュージアムで、学芸員の方からおおまかな歴史背景と富士市の地形を学ぶ。
曽我物語は、建久4年(1193年)に源頼朝が富士の裾野で行った大規模な巻狩りの際、現在の富士宮市上井出の地で、兄・曽我十郎祐成と弟・五郎時致が父の仇である工藤祐経を討ち果たした伝説を基にしている。
富士市にある曽我兄弟の墓には、今で言う「聖地巡礼」、江戸時代から参拝者が絶えなかった。兄である十郎祐成の愛人・虎御前を祀る玉渡神社、弟・五郎の首洗い井戸など、曽我物語の舞台となった歴史ある地を巡っていく。
そしてクライマックスは曽我寺だ。正式には鷹岳山福泉寺といい、今日では曽我寺の名で親しまれている。曽我兄弟ふたりの石像が立つこのお寺には、2人で1つの目的を成し遂げることの大事さを伝える石像3対があり、伝説について語られている。ここが東海道を歩く際の当時の演劇好き、聖地巡礼の1つだったようだ。
ツアー終盤、夕日に照らされる富士山を眺めながら、最後のサイクリングロードを走る。ツアーの最後にはスイーツ、『Little Farm』のプリンで疲れを癒やす。ここは最近テレビで紹介されたらしく、なかなか手に入らないプリンとの事だが、ツアーのために予約されていた。濃厚な味でとても美味。
ゴール地点では、ツアー終了のメッセージとともに、タリーズ富士中央公園店からコーヒー無料券がプレゼントされた。コーヒーを飲みながら参加者とツアーを振り返る話に花が咲く。次のツアーで再開しましょうという約束も。
体力に関係なく、消耗することなく、同じライドを楽しめるのは、eバイクのツアーならでは、大きな魅力だ。
体力のストレスなく巡れるeバイクツアーは、地域の魅力を再発見できる
参加者の多くは、富士市内在住の人。長く富士市に住む人から、2年前に富士市に移住してきたという若い人まで。自転車に乗るのは40年ぶりだという人から、ロードバイクを趣味にしようと思ったけれど挫折してしまった人、そして徒歩で東海道を歩いていて、このツアーを紹介してもらったなどと幅広いものだった。
知っていると思っていた自分の町を、改めて知るのはそれ自体が楽しいもの。しかもそれがeバイクなのであれば、体力的にもほぼストレスがない。ストレスがないので、様々な知識がしっかりと身に入ってくる。ちょっと訪れた施設にまたじっくりと時間をかけて寄りたい。そう思わせるツアーの組み方だった。
参加費は1万1000円、ガイド料・eバイクレンタル料・保険料・昼食代・スイーツ・消費税込み。ツアーもガイドの配慮がとてもよく、パネルを使った説明も、1つのストーリーを追っている感じでよかった。
ストーリーを組み上げるように地点を繋いでいけば、それだけで心に残るツアーになる。また歴史とつなぐのは良いアイディアだった。テーマの選び方と一貫したストーリー性がリピーターの鍵だ。eバイクでのツアーで地域の魅力を発信したいという自治体は参考にするといいだろう。
このツアーに関する詳細は、NINOMARU VILLAGEまで。