クルマの世界で進む「自動運転」への取り組みはクルマでの移動を楽にするためのことだけではない。
自動運転に期待されている大きなテーマは「交通死傷者ゼロの社会を目指す」ということ。そのために国や自動車業界は様々な技術の開発を進めているのだ。その一つ、パナソニックが主導する「電動アシスト自転車と自動車との通信による交通事故回避に向けた実証実験」を見学してきた。
余談だが東京のお台場、有明付近は2022年までの期間、内閣府が進める国家プロジェクトとして自動運転技術の実証実験エリアになっていたので、公道を走る自動運転車を見ることができていた。期間中にこのエリアをサイクリングしたことがある人で、ルーフに見慣れない機材を積んでいたクルマを見た覚えがあるとすると、それが自動運転技術の実験車だ。
このように現在は、未来に向け、国を挙げての交通のあり方を変えている時代だ。こんな時代を体験できるのは、人生の中でもそうあるものでないだけに、変わっていくことに戸惑うより、期待の気持ちで成りゆきを見ていきたいものだ。

さて、今回紹介するのはパナソニックサイクルテック株式会社と株式会社パナソニック システムネットワークス開発研究所(PSNRD)が、京セラ株式会社とトヨタ自動車株式会社、豊田通商株式会社と連携して進めている「高度交通情報システム(ITS)」を使用した電動アシスト自転車と自動車との車車間通信による交通事故回避に向けた実証実験」というものだ。
なにやら難しそうに思えるが、簡単に言えば、ITS通信ができる交差点を対象に、ITS情報通信端末を搭載した電動アシスト自転車とクルマが、相互通信(車車間通信と呼ぶ)することで、相手の姿が見える前から接近していることをお互いに対して知らせるもの。
これにより、見通しのよくない交差点で起こりがちな「出会い頭事故」を防ぐ手助けをする技術である。
こうした技術に関する「テストコースでシステムを活用した交通事故回避の実証実験デモを見てせてくれる」というのが今回の取材会だ。




それでは取材会の内容だ。実証実験の前には建屋内でプレゼンテーションが行われた。そこで話されたのが以下のこと。
まずは警視庁の発表のデータの発表。近年の自転車乗車中の交通事故の状況だが、これは減少傾向にあるということ。
とはいえ事故件数自体が少ないわけということではないし、内訳を見ると、自転車の事故ではクルマ相手の事故が約8割も占めていて、そのうち約5割が「交差点内での事故」という。
さらにインターネットでの調査によると、自転車ユーザーの約6割が交差点内で出会い頭の事故にあいそうになった経験があると回答したとのこと。

そんな状況に対して行われている技術開発が、電動アシスト自転車と自転車を対象としたITS向け専用周波数(760MHz帯)を使用する車車間通信である。見通しのよくない交差点に進入するお互いに対して、それぞれが接近していることをITS周波数を使う通信にて知らせるものだ。
実験の模様は動画で紹介するが、とにかくクルマが「交通死傷者ゼロの社会を目指す」という目標に向かって技術開発をしていることと同様に、自転車側も交通事故を減らすための取り組みを新技術を使用するカタチで進めているというのが大きな注目点だ。
現在は限定された枠組で進めるプロジェクトだが、こうした技術は「世の中に広まってこそ本来の目的を果たす」だけに、今後は規格化も想定して、政府機関や他の企業との連携も必須となっていく。
それだけに大変な仕事となるだろうが、このことは我々だけに関わることでなく、自転車に乗る友人、知人、そして家族にも「安全を与えてくれる技術」なので、我々eバイクが好きな人種(サイクリスト全体)としては、自転車が関わる不幸を減らしてくれるこの事業に注目したい。










