熊本県は阿蘇山、世界最大級のカルデラ地形に抱かれたエリアは、他では見られない景観がいくつも見られる。ドライブでめぐる、観光バスツアーでめぐる。そのそれぞれに魅力があるが、ガイドツアーでしか訪れることができないエリアがある。それは、阿蘇山に広がる牧野(ぼくや)だ。阿蘇の特産品として有名な赤牛を育む牧草地で、毎年春に野焼きが行われることで低木の成長を抑え、森にならないようにしている。なんと1000年の昔から続けられてきたというから驚きだ。ガイドツアーで走るのはこの草原と、野焼きの時に防火帯の役割をはたす輪地(わじ)と呼ばれるトレイルのような部分だ。牧野の周りにはススキ野原が広がり、これは日本一のススキ野原として有名だ。陽を浴びてきらめくそれは金色に輝く。
ここで放牧される赤牛は、上質な赤身肉がウリ。広大な牧野を移動し続けている、言ってみればアスリート牛なので、いい赤身の肉になるという。牛たちを鍛えている地形に人間たちも挑戦してみようというのが、ガイドツアーだ。
使用するのは、パナソニックのeMTB「XM2」。街乗りから、オフロードまで幅広いフィールドを走ることができるモデルだ。牧野は本格的なeMTBが必要なほど激しい地形ではないので、必要十分。そのかわりかなり上りが急なので、アシストパワーは必須と言える。
この牧野はツアーでなければ入ることができない。近くまで来たからふらっと入ってみようというのは許されないのだ。ツアーのスタート前には、石灰で靴底とタイヤの消毒を行う。外から家畜伝染病を持ち込まないためだ。
また、牧野内はトレイルとして整備されているわけではない。日々の風雨によって地形が変わっていく。つまり思わぬところに溝があったり、穴が空いていたりする可能性があるのだ。そして、方向感覚を維持するのが難しい。似たような隆起が続いているので、初めて来た人は自分がどこから入ってきたのかわからなくなってしまうだろう。
これらの理由により、ガイドツアーと相なったわけだ。前置きが長くなったが、いざ牧野に走り出してみると「最高」のひと言だ。広大な草原のどこを走ってもいい。盛大にシュプールを描く。MTBでこういう感覚になるというのは初めてだ。風と枯れ草をタイヤが踏む音が心地よい。
緩やかな斜面を降った後は、小高い隆起に一気に駆け上がる。アシストパワーが有れば苦もない。eバイクでなければへこたれてしまうようなコースだ。頂点からは、眼前に阿蘇五岳を含む山並みが視界いっぱいに広がっている。この景色には老若男女、わぁ!っと声が出る。
今回のツアーを体験できるのはこちら
ASO KUJU CYCLE TOUR
紹介したeMTBのほか、ロードバイクやクロスバイクなど人力のスポーツバイクを使ったガイドツアーも催行。
パナソニックのニューモデルXM-D2Vがツアーに特別登場
2019年に台数限定で発売されたXM-D2。前後にサスペンションを備え、XM2よりもさらに走破性能を高めたモデルが、レギュラーラインナップに加わった。2019年発売のモデルとの違いはドロッパーシートポストという、レバー1本でサドルの高さを自在に変更できる機構が搭載されたことと、リヤのギヤ枚数が10段から11段に増えていることだ。
12Ahのバッテリーを搭載し、ハイパワーモードで約61km、エコモードなら約107kmをアシストで走行可能。搭載されるパワーユニットはXM2と同じく250wのものだが、パワーの出し方はXM-D2Vのほうがよりペダルを漕ぐ動作に対して丁寧に反応してくる印象。不整地で丁寧なパワーコントロールが求められるeMTBにおいては、上位グレードにふさわしいチューニングになっていると思う。
パナソニック・XM-D2V
価格/70万1800円(税込)
フレームサイズ/420mm(適応身長163~178cm)
タイヤサイズ/27.5×2.80HE
重量/26.5kg
ギヤ/前内装2段、後11段(シマノ・SLX)
バイクツアー以外でも阿蘇を堪能!
eMTBツアーで体を動かした後は、グルメも外せない。阿蘇の赤牛を使った赤牛丼のが食べられるお店「いまきん食堂」さん。内牧温泉にある。人気店なので予約して行くのがお勧め。
いまきん食堂
熊本県阿蘇市内牧290
宿からも阿蘇山を楽しむ
阿蘇外輪山の北、大分県のくじゅう連山近くにあるのが瀬の本高原ホテル。客室の窓や露天風呂からは遠く阿蘇五岳を臨むことができる。
瀬の本高原ホテル
熊本県阿蘇郡南小国町大字満願寺5644
熊本地震被害から復旧中の阿蘇神社
2016年4月14日に発生した熊本地震。その被害は阿蘇にも及んだ。阿蘇神社では重要文化財「楼門」の全壊など社殿の多くに被害が及び、今は復旧工事の真っ最中だ。
阿蘇神社
熊本県阿蘇市一の宮町宮地3083-1