電動アシスト自転車の元祖が見る市場のいま

電動アシスト自転車の元祖が見る市場のいま

ヤマハ発動機は新たに開発した通学向け電動アシスト自転車「PAS ULU(パス ウル)と、20インチ子ども乗せ電動アシスト自転車「PAS babby(パス バビー)」及び「PAS kiss(パス キッス)のフルモデルチェンジ車の発表会を行った。

その会場で、電動アシスト自転車の市況が発表されたので、専門的な内容にはなるが紹介したい。

パスウル
新型電動アシスト自転車のPAS ULU。高校生の通学利用を意識して開発されている。カラーはマットカーキグリーン

電動アシスト自転車の状況

電動アシスト自転車のニーズの変化
電動アシスト自転車のニーズの変化。年々伸びている

発表会ではまず電動アシスト自転車を取り巻く状況が紹介された。それによると電動アシスト自転車の市場は10年前と比べると約2倍になっていることや、選ばれている車種としては軽快車が半数以上ではあるが、通勤、通学用のモデルも約35%ほどの規模になっているという。
そして電動アシスト自転車を購入している層だが、発売当初からのシニア層には変わらず高い需要があるが、近年は若年層の伸びが顕著で、とくに高校に入学する15歳という年齢層については、この15年で約17倍という非常に高い数値になっていた。

子乗せ電動アシスト自転車では共稼ぎで子育てをしている家庭が増えたことで、父親も育児をになうことが自然なことになっている。夫婦が協力して子どもを育てるという時代であるとのことだ。そのため子育ての時期に必須となっている子乗せ電動アシスト自転車は母親だけが乗るのでなく、父親も乗るものになっているそうだ。

パスバビー
メーカー希望小売価格はPAS babbyが18万4000円
パスキッス
PAS kissのメーカー希望小売価格は18万7000円の設定

若年層に選ばれる電動アシスト自転車を作る

ヤマハ発動機では10歳代の電動アシスト自転車ユーザー数は年々増加していて(車両購入時に付属する保証登録データによる)、この要因として考えられるのが通学で使用していた路線バスの本数減少がある。これはドライバー不足だったり燃料の高騰だったりの理由もある、そして通学バスについてもコロナ過を経て本数が減ったり、一時休止からそのまま廃止になったということもあるそうだ。
そこで代替えの足として選ばれているのが電動アシスト自転車。それに地方においては自宅から駅が遠いこと、列車の本数が少ない、経路的に遠回りになるなどの理由から
そもそも電動アシスト自転車の需要があったので、環境的にも電動アシスト自転車が普及しやすいものであったのだと思われる。
もうひとつ、10歳台の人は物心ついたときから電動アシスト自転車が身近にあった世代なので、通常のペダルバイクと同様の目線で電動アシスト自転車を見ることができる。そんなことも選ばれる要因と考えているそうだ。
そしてさらに、近年は男子も電動アシスト自転車を選ぶ傾向になっていることが大きなポイントであった。漕ぐ力をサポートする電動アシスト自転車は当初、体力面のサポートを目的とした選び方が主流だったが「便利で快適」という面が目立つことで、自然と性別問わずで選ばれるようになった。それに伴い、以前はこの年代の男女比率では男子のユーザーは約25%ほどだったが、最新のデータでは男女で半々になっているという。

パスのユーザー層を表すデータ
PASのユーザー層を表すデータ。若い世代に電動アシスト自転車 が選ばれている傾向が見える

こうしたデータとあわせて、よりニーズに対応させる製品とするためにヤマハ発動機では電動アシスト自転車を利用する高校生へのインタビューも行っている。
そこで得られたデータでは車体デザインに関するものが多いが、通学に使用するものなので目立ちすぎないことが求められていた。ただ、地味なモノがいいというわけではない。適度にスタイリッシュでありさらに「好きな色の自転車に乗りたい」という声も多かった。そして荷物を積むなど「通学に便利な機能性があること」という要望もとても多かったという。

学生のニーズを調査
新型のPASは学生のニーズをしっかり調査して開発した

今回の電動アシスト自転車市場の調査結果を踏まえて、今後社会のインフラとしての重要性が高まることが予想される。そうしたときに、ヘルメットの着用努力義務や、ながら運転の厳罰化ということだけではなく、自転車の利活用が促進するような施策も同時に必要だとeBikeJapanは考える。

狭い生活道路で車に遠慮しながら自転車が走るのではなく、ちゃんと自転車の走る権利が車の運転手にも伝わるような仕組みづくりや、通学時間帯には、通学路を自動車進入禁止するなど、車道を走るものとしての認知を進めるべきである。

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