スポーツサイクルショップ「ワイズロード」を全国に展開するワイ・インターナショナルは10月下旬に発売予定の新型eバイク「RAIL ACTIVE-e(レイルアクティブe)」のメディア向け試乗会を都内で開催した。
ホンダのスマチャリシステム搭載のRAIL ACTIVE-e
RAIL ACTIVE-eとは「KhodaaBloom(コーダーブルーム)」製のクロスバイク「RAIL ACTIVE」をベースに、ワイ・インターナショナルが本田技研工業が開発をしたeバイク制御システム「SmaChari(スマチャリ)」を搭載して電動アシスト化した車両。このスマチャリは既存の自転車を電動化するだけでなく、日本の法令に適合した出力制御を行えるので、RAIL ACTIVE-eはあと付けの電動アシスト化車両でありながら、国で定める規定にあった自転車であることを証明する型式認定を取得し、安全で安心して乗れるeバイクとなっている。
既存のeバイクと違って特殊なモデルなので、試乗レポートの前に車体の作りからを紹介しよう。
まずベース車両だがこれは日本のスポーツバイクブランドであるコーダーブルーム製で、同ブランドのRAILというクロスバイクシリーズ内からスポーツバイクのエントリーモデルであるアルミフレームのRAIL ACTIVEをチョイスしている。
ベースのRAIL ACTIVEは、手頃な価格帯でありながら走りのよさを追求したフレームを採用。BB位置を下げることで他車の同等サイズのクロスバイクより約20mmほど長いフロントセンターとした。
こうした作りにより直進安定の優れた特性となり、フラつきが発生しやすい低速域から巡航時までバイクコントロールがしやすくなっているという。
また、使用するパイプ材は強さが必要な部位と、軽くできる部位を解析し、それに応じて肉厚を3段階に変化させる「トリプルバテッド加工」を採用していて、高い剛性を持ちながらロードバイク級の1350gという超軽量なフレームとしている(アルミフレーム)ので、eバイク化したRAIL ACTIVE-eも15kgという車重に収まっていた。
スマチャリ制御による絶品アシスト
このようなベース車に追加されたのがワイ・インターナショナルが扱うドライブモーターやバッテリーなどの電動化キット。こちらはRAIL ACTIVE専用ではなく、他のモデルにも使用できるので、こちらの電動化キットを使うeバイクラインアップの拡充も期待できるものである。
ただし、電動化すればそれでeバイクになるわけではない。日本の法令では時速10kmまでは漕ぐ力に対して2倍のアシストが許可されているが、その速度を超えるとアシスト力は落とす必要があり、最終的には時速24kmでアシストを終了すると決まっている。
そのため車速やペダルをむ力を測るセンサーや、そこからの信号をもとにモーターの使い方は法令にあうよう制御をする必要があるのだ。そしてRAIL ACTIVE-eではそういったeバイク化において核になる部分をホンダのスマチャリが受け持っている。スマチャリの特徴については以前の記事にて紹介しているのでそちらを見てほしい。
ロードバイク乗りエンジニアが作った乗り味とは
さて、RAIL ACTIVE-eの試乗だ。制御をつかさどるスマチャリシステムでは、乗り手とのインターフェースとしてスマチャリアプリがある。このアプリは無料でダウンロードでき、自分のRAIL ACTIVE-eを登録すると、スマホがキーになり、アプリを立ち上げないと電源が入らないようになる。
そしてアプリ画面は地図情報のほか、アシスト特性を設定できる機能が設けてある。そこで基本となるのが「AIモード」だ。
AIモードとは走行時の特性(速度域やペダリング状況など)に応じてモーターの介入を意識させないような自然なアシストを行うものだが、乗ってみるとちょっと予想以上の好フィーリングに驚かされた。ペダルを踏んだときのパワーの出方がスムーズと言うだけでなく、強く踏んだときや弱く踏んだときではパワーが発生するまでのタイムラグを変えるので、アシストが立ち上がってもその介入感を上手に隠している。そのためより人の感性に近い進み方を作っているのだ。
AIモードのほかにパワー設定やレスポンス設定をユーザーが決めることができるモードもあって、そちらでレスポンス設定のレベルを変えてみたところAIモードで感じた違いがより分かりやすかった。とはいえこのことは事前に説明を受けていたので「意識して試せた」からここまでわかったのだと思う。前知識がなければ効果があっても気がつかないくらい自然なのだ。
こうした制御を実装できたのはホンダのスマチャリ開発陣にロードバイク乗りがいたからであった。それが前の写真にも写っているホンダのエンジニア、服部さんだ。
この方は年間で約1万kmという距離を走るブルべ勢なので、スポーツサイクルでのペダリングについては熟知しているし、スマチャリを開発するうえで技術者の目線でペダリングのデータを収集し解析していた。
そしてそれらデータをもとにスマチャリでのアシスト特性を作ったのだが、ここでひとつの懸念があったそうだ。それがモーターの仕様だ。
ドライブユニットの制御は数値のデータ作って行うもので、作り込めば繊細な動きまで指示できるようになる。そしてそのデータは電気信号となってモーターを制御するのだけど、モーターを含むドライブユニット側のスペックが細かい制御に対応できないものだと、作り込んだデータが役に立たないことになる。このときホンダがモーターも作っていれば連携して開発できるが今回はそうではない。
しかし、そんな心配は杞憂だった。ワイ・インターナショナルが用意したモーターを含むドライブユニットはスマチャリ側の細かい制御にもしっかり反応できるものだった。
そしてさらに通常ではトルクと速度のセンサーが主体になるところに加速度センサーも追加することで、本格的にロードバイクに取り組む服部さんが考えるアシスト特性をRAIL ACTIVE-eにもたらすことができたのだ。
アシストに関してはいい印象だったが、肝心の自転車の部分はどうかというと、今回の試乗ではあまり時間もなかったのでとりあえずRAIL ACTIVEの持ち味である安定感を試してみた。
自転車レーンに具合よく? 設けられていた速度抑制用のポールの間を速度を落とし、交互に配置されている間を抜けてみたが、車体がふらつくことなくスイスイと通過することができた。さらにもっとスピードが落ちるUターンでもふらつきがなく乗りやすく感じた。
最後にもうひとつ。今回のコースではeバイクを降りて押し歩きする区間があったが、そこには大きな段差があったので越えるときは車体を持ち上げたのだが、RAIL ACTIVE-eの15kgという重量であれば、ラクラクとは言わないが、それほど力を入れずに持ち上がった。自宅に駐めるときに段差や階段がある場合でも、これなら許容範囲だと思う。
RAIL ACTIVE-eは7月21日より画像にあるワイズロード店舗にて試乗が開始されるので、興味を持った人はぜひ乗りにいってそのフィーリングを体験して欲しい。