電動アシストシティサイクル(電動アシストママチャリ)はチャイルドシートに子どもを乗せたり、その状態で買い物の荷物を載せたりと、積載に関しては自転車の中でもハードに使われる部類である。
それだけにアシストがあることのメリットは大きいのだけど、買い物に行った先の商店街などでは「自転車を降りて押し歩く」がルールになっていることもある。そのためママさん達は子ども2人に荷物というフル積載で総重量が60kgを超えることもある電動アシストママチャリを押し歩きしているのだが、この重さは原付スクーターとほぼ同じ数値。押し歩きすることはママさん達の負担は非常に大きいものであった。
そのため電動アシスト自転車では、海外モデルに採用されている「押し歩き時のアシスト機能」の実装を求める声があったのだが、日本ではペダルを漕がないと走行しない構造であることなど、電動アシスト自転車に対する法律があるので、海外モデルにある押し歩きアシスト機能をそのまま導入することはできなかった。
そんななかパナソニック サイクルテックは、日本の法律にあった仕様での押し歩き時のアシストが使用できる機能を搭載した幼児2人同乗用電動アシスト自転車の「ギュット・アニーズ・DX・押し歩き(以下ギュット・アニーズ)」を発表し、2024年4月12日に報道向けに発表会を開催した。
ギュット・アニーズの車体サイズは全長1785mm、全幅580mm、車重は32.8kg。変速は内装3段。ドライブユニットはパナソニックサイクルテック製のカルパワーユニット。バッテリーもパナソニック サイクルテック製のリチウムイオンバッテリーで容量は16.0Ah。一充電での走行距離は「パワー」で約50km、「オートマチック」で約60Km、「ロング」では約86kmとなっている。バッテリーは車体から取り外し可能で充電時間は約5時間。
そして発売時期は2024年6月上旬を予定していて、気になる価格は18万3000円と言う設定だ。
押し歩きに最適化されたアシスト機能を搭載
電動アシスト自転車はモーターやバッテリーを搭載しているのにあわせて、子ども乗せなどの用途から車重が通常のシティサイクルより重くなるので、アシストによる走りの軽快さがある反面、押して歩く際に重さが大きな負荷になっていた。
そこで電動アシスト自転車の市場では54%のシェアを持つ(2022年度データ)パナソニック サイクルテックは、電動アシスト自転車に押し歩きアシストの機能が欲しいというユーザーの声に応えるため、2014年より押し歩き機能の開発を行ってきた。
パナソニック サイクルテックのギュット・アニーズはビビ・L・押し歩きに対して、押し歩きアシスト速度などを子育て世代のママさんの年齢層(身体能力や体格など加味して)にあわせた特性にしてあるので、自転車を押すとか引くと言う感覚ではなくて、いっしょに歩くというような自然なアシストを目指したもの。
また、速度センサーや傾斜センサーなどを搭載しているので押し歩く速度や道路の状況、荷物の重さなどに応じてアシスト力を自動で調整するようになっている。
押し歩きモードの使い方
押し歩きモードを使用するには自転車から降車した状態、及び電源が入っている状態で、サドル後方に付けてある「押し歩き用レバー」を引き上げる。すると同時にサドル後方が持ち上がるが、これは押し歩きモード中に乗車できないようにするための工夫だ。
サドル後方のレバーを上げると押し歩き機能が有効になる。そして機能を使うときはハンドル左側にある手元スイッチを押すことでアシストがはじまる。
この手元スイッチはグリップを握ったときの親指が自然に届く位置にあり、さらに指がある方向にスイッチが向くような形状としている。また、スイッチ自体も丸く膨らますことで押せる面を増やし軽く押せるようにしてあるなど、手の小さい女性でも押しやすいことを求めて開発されたもの。押し歩きモードを安全に使用するにはスイッチを押し続ける設定がいちばんだけに、スイッチが押しやすいことも大事な性能。こうした使う人の立場に立った作りは「さすがパナソニック」と言える部分だ。
パナソニック サイクルテック社長 稲毛氏によるプレゼンも紹介
ギュット・アニーズ発表会では、パナソニック サイクルテック 代表取締役 社長執行役員の稲毛敏明氏による事業戦略の方向性などが語られたので、最後にその内容を紹介していこう。
稲毛氏はまず「当社は世界中の人々が青空の元へ走り出せる未来を創造するというミッション・ビジョンを掲げて事業を推進しております。これは革新的なテクノロジーとお客様につながるサービスや独創的なアイデアによって新しい移動体験を提供し続け、サイクルモビリティのリーディングカンパニーになるというものです」とパナソニック サイクルテックが掲げている目標を紹介した。
続けて「パナソニック サイクルテックの国内事業についてはライフステージに合わせた価値提案により、自転車活用の拡大を牽引していきます。自転車活用社会の拡大には3つの軸があると考えていまして、ひとつ目が非電動から電動の自転車への乗り換えです。ふたつ目が自動車など他のモビリティから電動アシスト自転車への乗り換え、そして3つ目はスポーツ用途や駐輪場不足に悩む都市部での活用などで、これらのことを追っていくことが新たな市場創出となります。つぎに海外事業については欧州をメインターゲットとし、モーターやバッテリーなどを完成車メーカーに販売する電動ユニットのBtoB事業を推進しています。欧州におけるエリアごとでニーズに応じて段階的な攻略を進め、新モーターの開発なども含めて商品戦略、サービス体制などを強化していきます。また、新規事業に関しては、集合住宅向けのシェアリングサービスの事業化に向けた開発の推進や、 自動車メーカーなどとの協業による、自転車事故の削減に向けた安全技術の開発を推進していきます」と説明した。