今回紹介するのは、昨年の12月に代官山モトベロで開催された「BESV PSシリーズ オーナーミーティング」に参加してくれた「まるた父」さんのPS1(以下まるた父PS1)だ。
PSシリーズと言う個性的なモデルが集まるイベントだけにカスタマイズされた車両もいるのだろうとは思っていたが、想像の上を行ったのがまるた父PS1、ノーマル車より高められた車高に細部の作り込みなどなど、すべてが見どころと言った車両だった。そこで後日あらためて見せてもらうお願いをしていたのだ。

カーボンフレームの造形を際立たせる配色カスタム
PSシリーズには3つのモデルがある。1つは標準車といえるPSA1。そして折りたたみができるPSF1。3つ目は上位グレードとなるPS1で、このモデルのみカーボンフレームが採用されている。
カーボンフレームは主に軽量化のために用いられるものではあるが、繊維素材ゆえに金属では表現しにくい造形が可能という特徴も持っている。そしてベスビーはその特徴をPS1のフレームデザインに生かしていた。
基本的なイメージは他のモデルと同じだが、トップチューブは滑らかな曲線とエッジを組み合わせたデザインで、他のモデルと比べるとよりスポーティであり、高級感も感じるものになっている。そしてまるた父さんがPS1を選んだポイントはまさにそこだった。
ただ、ノーマルのカラーリングではフレームデザインの特徴がわかりにくいと感じていた。そこでエッジの部分を際立たせる意味で、エッジに対して「えぐれた」感じになっている側面にシルバーのシートを貼った。同時にこのシルバーシートによってトップチューブの黒い部分の面積を減らして、フレーム上部に感じていた「視覚的な重さ」を軽減。
ただ、そのままでは黒い部分が減りすぎてバランスがよくないので、元は白かったバッテリーカバーを黒いモデル用の黒仕上げカバーに変更。これによりPS1らしい配色のイメージが残るので、配色を変えていながら違和感を感じない仕上がりになっていた。







走りの面のカスタマイズ
eバイクはアシストのおかげで多少のアップダウンがあってもシフト操作せずに走れてしまう。そのためスポーティなコンポーネントが付いていながらそれを生かし切れていないケースも多く、ペダリングも「ナリ」に漕いでしまう傾向でもある。
でも、まるた父さんの乗り方はそうではない。アシストはもちろん活用するが積極的に「漕ぐ」スタイルで、アシストは楽をすると言うよりよりレスポンスよく走るためのものという感じだ。
そして漕ぐことに意識がいくと、自然とどのギヤで走ると楽しいかを考えるようになってくる。すると小まめにシフト操作をするようになるだが、そうした乗り方をするのに対して純正ギヤ比はオープンレシオだった。ギヤ間が離れていたのでシフト操作をすると漕ぐパワーの度合いも大きく変わって気持ちよくない。
そこでフロントのチェーンリング、及びリヤのカセットスプロケの歯数を変更してクロスレシオ化をした。これで起伏にあわせて小まめにシフトしながら、繋がりが自然でテンポのいいペダリングが楽しめるようにしている。
ただ、ギヤの設定はロー側を中間ギヤに寄せているので軽めのギヤを選んだとしても漕ぎ出しが重くなった面もあるが、そこはアシストがあるのでふだん乗りで不都合はないという。


独特のフォルムはこうして作っている
続いては車高について。まるた父PS1のルックスでもっとも印象的なのが車高の高さ(ボトムブラケット部から地上まで)だ。これも前出のノーマル車と見比べてもらうとわかるが、かなり違っている。実測はしてこなかったが約15cmは高くなっていると思われる。
このスタイルは700cサイズのホイールを履くクロスバイク用のフロントフォークを組んだことによるものだが、20インチのPS1にこのサイズのフォークをあわせようと思ったところにセンスを感じる
そしてフロントが上がったのに合わせてリヤショックの全長を長いものに交換。それによりスイングアームのショック取り付け部の位置が後ろに下がるので、スイングアームの角度が付き、同時にフレームの後端も持ち上がるようになる。これでフォークを変えたことによる車高のアップに対して前後のバランスを取っているのだ。
と、文では簡単に説明してしまうが参考資料もない、基準点もないという状態から、フレームの水平度を合わせていくのは至難の業。実際、ショック長の選定や取り付け方については試行錯誤の末、いまの仕様に落ち着いたという。
なお、気になる走行フィーリングはというと、とくにクセもなくフロントショックも街乗りレベルの段差であれば衝撃をスムーズにいなしてくれるという。リヤもバンプ、リバンプとも違和感はない。また、固さが調整できるのでノーマルより走りやすいという。



以上がまるた父PS1のカスタム概要だ。見た目には車高の高さという「大技」の部分が目立つが、この車両が魅力的に見えるのはそこだけが理由ではない。色のバランスだったり、使用するパーツがしっかりと「走り」や「機能」など、このPS1に合ったものであることが「完成度」を高く見せている大きな要因だ。
なお、このPS1はどこかのショップに依頼して製作したのでなく、プランニング、パーツ調達、ワンオフパーツ製作、組み付けまで全てまるた父さんがやったものである。
これはもちろんすごいことだが、自転車に限らずオートバイ、クルマなどカスタマイズ全般において、こだわりが深くなるほどそれをショップ等の作業者に正確に伝えることは難しくなる傾向だ。そのため仕上がりが思い描いていたイメージと少し違った感じになってしまうことはありがち。
でも、すべて自分でやれるとしたら細部まで思いどおりだ。この思いどおりとは使うパーツのことだけでない。ネジ類の色やデザイン、それにケーブル類の長さやまとめ方など本当に細かい部分まで「同じセンス、同じ質感」でまとめられるので、「ひときわカッコよく」見えると言うこと。
まるた父さんのPS1は派手な見た目をしているが、おそらくこの記事を読んでくれた人は「それだけじゃない」と感じただろうが「それ」はそういうことなのだ。




