スポーツサイクル、eバイク(電動アシスト自転車)、各種用品、部品の販売からメンテナンスなど、自転車ライフに関わることを手掛けるスポーツサイクル専門店「Y’s Road(ワイズロード)」では、各店舗にてスポーツサイクルに関するスクールやセミナーも開催している。そして今回、街中で見かけることが増えてきたeバイクを取り上げたセミナーを開催した。
スポーツサイクル専門店が開くeバイクのセミナーと聞くと、最新モデルの情報などが聞けるのかと思うところだが、今回はそういった内容ではない。
eバイクや電動アシスト自転車は着実に普及しているのだが、これらの電動車に対する「決まりごと」まではまだまだ広まっていない。
そのため原付モーターサイクルに属する「電動自転車」や、アシスト比率が日本の法律にあわない「海外仕様のeバイク」を、法規にあうeバイクや電動アシスト自転車と同じように乗ってしまう人もいる。
でも、こうした行為は道路交通法に反することなので運転車が罰せられることもあるし、事故を起こしてしまった場合、法律に違反する乗り物では過失割合が高くなったり、障害保険等に加入していても適応されないリスクがある。
そんなことから、いまeバイクを取り巻く状況に対して必要なのは、ユーザーにeバイクを正しく理解してもらうことであると同時に、eバイクを報じる立場であるメディアもeバイクについての正しい知識を持つ必要があるのだ。
そんなことからワイズロードでは、今回、eバイクに関するニュースを報じる機会が増えているメディアを対象としたセミナーを開催したのである。
プレスセミナーの内容を紹介
では、プレスセミナーの内容だ。原則としてワイズロードが発表した内容に沿うが、メディア向けの場合、より詳しいことはあとでの質疑応答や個別取材で対応したりするので、配布する資料では内容が多少はしょられる面もある。そこでこの記事ではワイズロードの発表に対して補足も入れて紹介していこう。
eバイクとは?
ルーツとなるのは1993年にヤマハ発動機が発売した軽快車タイプの電動アシスト自転車である。それから約10年後に世界的なサプライヤーであるボッシュがスポーツサイクル向けの電動アシストユニットを開発。そして欧米の自転車メーカーがボッシュ製ユニットを搭載した「電動アシストが可能なスポーツサイクル」を発売。これがeバイクと呼ばれるジャンルを作っていった。
世界と日本のeバイク事情
環境問題や健康志向、モビリティの多様化に対しての関心が高い欧州では、eバイクは以前から高い人気を持っている。
対して日本は法規的な面から海外製のeバイクをそのまま販売できなかったのことが響いて広がりが遅れていた。
しかし2015年にヤマハ発動機がeロードバイクを発売したことからeバイクへの注目度が向上。その後は日本のメーカー及び、日本の法規に適合した海外メーカーのeバイクも多数発売されていて市場は拡大傾向になっているという。
法規適合について
eバイクを含めた電動アシスト自転車には「自転車」としての決まり(車体寸法など)と同時に、アシスト装置の種類、アシスト速度域や強さに対する決まりがある。
これは業界の自主規制ではく国が定める「道路交通法施行規則」のなかの「人の力を補うため原動機を用いる自転車の基準」という項目に書かれたものだ。
そしてこの法令に適合した作りにしつつ、国家公安委員会から型式認定試験審査の業務を委託されている「公益財団法人日本交通管理技術協会」に申請をして審査に合格することで「型式認定を受けた法規適合の車両」となるのだ。
法規適合のeバイクや電動アシスト自転車では、時速10km未満のとき、人がペダルを漕ぐ力に対して約2倍のアシスト力まで出すことができる。電動アシスト自転車の発進がスムーズなのはこの設定のおかげだ。
そして時速10km以上になると速度が上がるほど徐々にアシストの力を落とす制御があり、時速24kmを超えるとアシストは完全にきれるという動作の決まりである。
なお、海外メーカー車などには自転車としての型式認定は受けていないが、アシスト機能は日本の法規にあわせてある車種もあって、こうした場合も法規適合と呼ばれている。
電動アシスト自転車と電動自転車
市場には「ペダルを漕がずにモーターの力だけで走れる自転車」というものもあって、俗称として「電動自転車」などと呼ばれたりする。
そのため電動アシスト自転車と間違えやすいが、eバイクや電動アシスト自転車には上記にような法律があるのでペダルを漕がずに走れるということは、電動アシスト自転車どころか自転車ですらない「別の乗り物だ」。
こうした車種は125ccのモーターサイクルと同じ(原付一種、原付二種)に分類されるので、保安基準に適合する灯火類などの装備に市区町村でのナンバープレート交付、自賠責保険への加入などが必要。走る場所も原付が走行できる車道のみ。
つまり見た目はeバイクや電動アシスト自転車と似ていても「自転車として乗ることはできない」のだ。
また、ペダルを漕いで走る仕組みであっても、法令で決められた範囲以上のアシストができてしまうeバイクや電動アシスト自転車も公道で乗ることがはできないので注意したい。
そこで購入時は「法規適合」の車両なのかをしっかりと確認することも必要だ。これは販売店で聞くのもいいし、「公益財団法人日本交通管理技術協会」のサイト内にある「型式認定対象品検索」でも調べられる。
ワイズロードにおけるeバイクの販売状況など
ワイズロードではここ数年、毎年5%ペースで売り上げが成長し、為替や海外事情の変化で自転車全体の販売価格が高騰した2022年以降であってもeバイクは堅調な売り上げを維持しているとのことだ。
つぎに購入層だが、30歳~50歳代が7割を占めていて、そのうちいちばん多いのは40歳代。こちらが約3割となっている。
ワイズロードは全国に店舗展開しているが、そのなかでも地理的に坂道が多い地域の店舗(横浜店、神戸店)ではとくに販売比率が高い。また、eバイクの品揃えが豊富な店舗(新橋店、新宿クロスバイク館、名古屋クロスバイク館、お茶の水店)でも同様の状況だという。
以上がワイズロードのセミナーの主な内容だが、店舗状況の解説にあったようにeバイクは販売価格が高額なことも多い。
そこでどうしてそういう傾向か、という点について質問してみたところ、eバイクは電動化のための装備が追加されていることや、趣味性の高いeバイクには自転車を構成するフレーム、フォーク、ホイール、そしてギヤまわりやブレーキなどなどの部品にグレードの高いものが使われることが多いので、そういった面からの価格設定になっているという答えだった。
電動化されているだけに購入後のメンテナンスについての質問もしてみたところ、電動化されている部分に不具合があった場合は「販売店ではなくメーカーに点検、修理を行う」という。こうした対応は他の分野の製品でもあるのでeバイクに限ったことではない。
ただ、電動化以外の部分は自転車なので安全、安心に乗るには自転車としてメンテナンスは必要だ。そこでワイズロードでは修理部署を構えてサービスを提供しているとのことだ。