林道をつないで登山道まで一気にアプローチ!
あの山の頂から、いったいどんな景色が見えるのだろう? 自転車と登山という、それぞれ自分の足で汗をかきながら、遠くまで行くことができるこの二つの遊び方。それらを組み合わせれば、もっと違う世界が見えてくるのではないだろうか。
今回登山×eバイクの遊び方を紹介してくれる村山孝一さんは、まさに登山のプロフェッショナル。アフリカ大陸のキリマンジャロ、南米大陸のアコンカグアといった世界五大陸最高峰を次々と制し、そしてユーラシア大陸では世界で8番目に高い標高8163mのマナスル登頂を成功させた、まさに名実ともに世界に挑むアルパインクライマーだ。
年齢50を超える彼は、少年時代の「ロードマン」でスポーツバイクに慣れ親しんだ後、青年時代にはモーターサイクルにどっぷりと熱中。オフロード車でタクラマカン砂漠を走破するなど、大の二輪好きでもある。それらが高じて、2021年の春にトレックのMTBタイプのeバイクであるパワーフライを選び、登山道具の一つとして愛用している。
さて、日本の夏の登山というと、勾配がきつく幅の狭い山道を長い時間をかけて登って行くことが多い。そして登山道に至るまでは、人里を遠く離れた細い林道が続いているもの。そんな道を車や公共交通機関か、自分の足で移動することになる。するとそこには制約と呼べるほどの時間や金銭、コースプランニングが必要とされてしまう。もちろん人力の自転車で登山口までアプローチすることも可能だが、限られた体力と脚力が犠牲になり、経験とスケジュールに余裕がない限りはお勧めできない。自転車も登山もどっちつかずになってしまうと本末転倒だ。
だからこそeバイクと登山は相性がいい。それも村山さんが選んだeMTBタイプであれば、ごつごつの太いブロックタイヤと衝撃を緩和してくれるサスペンション、オフロード専用にアシスト出力を調整された高性能ドライブユニットの力で、ラクラクと登山道まで走り続けることができるのだ。
Rider:アルパインクライマー 村山孝一さん
世界五大陸の最高峰を次々に制し、世界第八位高峰のマナスル(8163m)も登頂。大の星好きで、元プラネタリウム解説員として今も子供たちへ星空の魅力を伝える。
行程の例を比べてみると…..?
●eバイク × 登山の場合:より効率良く登山もできる
8:00〜9:00 eバイク
9:00〜16:00 登山
16:00〜17:00 eバイク
●林道歩き × 登山 × バスの場合:アプローチによけいに時間が必要
8:00〜10:00 林道歩き
10:00〜14:00 登山
14:00〜16:00 バス待ち時間
16:00〜17:00 バス
【TREK】eBIKE INFO
TREK POWERFLY5(トレック・パワーフライ5)
価格/ 55万5500円
アメリカンブランド、トレックのMTBタイプのeバイク。フロントに120mmの可動域のあるサスペンションを搭載し、大径のブロックタイヤを装着するのであらゆる道を走破できる。625Whの大容量バッテリーは取り外し可能なインチューブ式で、外観もスマートなのが○。
ドライブユニットにはボッシュ・パフォーマンスラインCXを搭載。オフロード走行に最適化するアシストを行う「eMTB」モードで、トレイルでのライダーの動きとバイクがシンクロする。
登山×eバイクの3大オススメポイント
1. 登山道までのアプローチも楽しめる!
本格的な登山道が始まるポイントまでの移動は、①車、②バスまたはタクシー、③徒歩のどれかで行うことになるが、eバイクならばその移動に必要以上の体力を使うことなく、自由にアプローチできる。
2. オフロード走行や重い荷物も余裕
登山口までの林道は多くは未舗装路。オフロード走行に適したMTBタイプなら、そんな長い荒れ道も軽々走破だ! 重い荷物をマウントして楽に運ぶこともできる。
3. 自力での行動範囲がより広がる
登山のだいご味である、自分の足を使って遠くまで行くことができるという点。それは車道や舗装路を効率良く走ることのできる自転車移動を組み合わせるからこそ、より多くの道を楽しめる。
【eバイクと登山】自分の足でもっと遠くまで。そんな夢をかなえてくれる
今回の村山さんのデイトリップは、都内の自宅を早朝に出発して河川敷や幹線道路、緩い上りの林道を経て登山道へ。そこから東京の登山好きの間で人気の陣馬山に、刈寄山、今熊山、堂所山、高岩山と五峰を続けて登頂するというものだ。
「山深い奥多摩では、登山道だけでなく林道を組み合わせることで、よりバリエーション豊かなコース取りができます。林道は歩くのには少々味気ないですが、eバイクならそんな道すらも楽しむことができますね」。人力スポーツバイクでも車でもできない、このeバイクだけのコースプランなのだ。
刈寄山へ続く上り坂をeバイクのアシストでぐんぐん進み、あっという間に景色が開け始めてきた。登山口の看板の脇に自転車を止め、トレッキングポールを組み立てて、あっという間に登山の準備完了!
「人力スポーツバイクなら、どうしてもサイクリングを効率良く走るために、ぴちっとしたパッド入りジャージや専用シューズを選ぶことになるものです。でもeバイクなら普段のトレッキングのスタイルでも乗りやすいのでいいですね。もし荷物の詰まったバックパックを背負うのが負担なら、リヤラックに付けたサイドバッグへ荷物を分散して運べば、体も身軽に走ることができますよ」。
続けてピークを経て、再びeバイクで東京のサイクリストの人気コースである和田峠へ。峠の脇からそのまま登山道へ歩いていく。木々の中、深く呼吸しながら一歩一歩を踏みしめて進んでいく度に、普段の生活から遠いところへやって来たのだと実感する。
森が終わり、視界がパッと開けた。陣馬山頂から果てしなく続くような東京の街と関東の山を見渡す。このどちらをも自分の足で進んでいくことができるのだから、eバイクと登山はやめられないのだ。
■登山家の持ち物はこれだ!
20ℓ程度のトレッキング用のバックパックには、バイク修理キットの他に、急な天候変化に備えたアウターシェルやエマージェンシーキットといった登山の必需品のほか、こだわりのアイテムを揃えている。
夏の低山ソロ登山装備ということで熱中症になった場合の機材、救難ヘリの発信器の他には、星空ガイドでもある村山さんの愛用している双眼鏡、スワロフスキー(SLC 8×56mm)も。「一晩中双眼鏡を覗いて星空散歩していても疲れない、孫の代まで受け継ぎたい逸品です」