名古屋市千種区の商業施設「星が丘テラス」に店舗を構える電動アシスト自転車専門店『モトベロ星が丘』。このショップが主催するeMTBの試乗会が、2022年8月27日に開催された。場所は、名古屋市内から自動車で約1時間の岐阜県関市にある「大杉MTBトレイルパーク」。里山に作られた本格的なトレイルで、最新のeMTBを楽しめる貴重な機会とあって、朝早くからたくさんのマウンテンバイカーがやってきた。
「モトベロがショップを離れて、MTBコースで試乗会を開催することは、まだ数回目だと思います。モトベロ星が丘としては、初の試みです。それだけに、どんなお客様に、どう反応していただけるかとても楽しみです」。当日、試乗会会場にやってきた主催者のモトベロ星が丘ストアマネージャー、國定尚倫さんは、開始前に意気込みをそう語ってくれた。
eMTBの実力に熱狂する参加者たち
試乗車は、メリダ、ミヤタ、スペシャライズド、ヤマハ、ベスビーの5ブランドの最新モデル8台。試乗車がコース入口付近に搬入されると、それまで自由に走っていたマウンテンバイカーたちが、興味津々、ブース前に集まってきた。そんな勢いに押されてか、少し時間を前倒しして、開始時間の10時前には貸し出しをスタート。アシストの強弱の切り替え操作や、車種ごとの特徴を聞いたら、即コースへ。一瞬にして用意された試乗車がなくなるほどの勢いだった。
「お~、なんだこりゃ」「なんと楽ちんな」「上りで加速するのがすごい」「これに乗ったら、普通のMTBには戻れないかも」などなど。どろどろになった試乗車が返ってくると、参加者たちは、笑顔で思い思いに感想を語っていた。そして、「こっちはどうかな?」と、別の車種に乗り換えては、コースに戻っていった。
価格もスペックも様々。走り方によって適正車種は変わってくる
「シンプルに電動アシストの楽しさを求めるなら、ヤマハのYPJ MT-Proがおすすめです。モーターがパワフルで、速度や乗る人のパワーなどをセンサーが感知して、最適なアシスト力に調整してくれるATアシストモードがあるので、リラックスして楽しめます。
MTBらしい本格的な走りを求める方には、スペシャライズドのS-ワークスターボリーヴォ。最新のレーシングバイクにも使われている最高峰のMTBパーツを組み込んだ、操作性や走りの軽快さに加え、パワフルなアシストがあるので、最強のeMTBではないでしょうか?価格も最強(169万4000円)ですが」
さすがは、電動アシストバイク専門店。メーカーの枠を超え、すべての試乗車の特徴を的確に教えてくれた。
ミヤタのリッジランナーは、価格を据え置いた買いやすさが魅力
この試乗会にはミヤタサイクルの治部野忠司さんも応援にやってきた。「今回は、メリダとミヤタのリッジランナーの試乗車を用意しました。各社とも、スポーツバイクに限らず、eMTBも例にもれず価格が高騰したり、品薄が続いています。そんななか価格を据え置いて販売しているのが、リッジランナー8080です。フルサスで、シマノの一番容量が大きなバッテリーを搭載して46万900円というのは、今となってはお値打ちに感じさせます」と治部野さん。
もはや上りは苦行ではない。eMTBなら上りのコーナーを攻められる
せっかくなのでコースに入り、試乗させていただいた。コースは、1mほどの幅で小気味よくコーナーが現われ、トレイルでバイクコントロールする楽しさを引き出すような作りだ。里山の斜面を上手に利用したコースレイアウトで、しっかり上り、軽快に下れるコースもある。長い上り坂でも、トルクもあり、少しのペダリングでグイグイ進むeMTBのおかげで、苦しさを感じることはない。息も上がらない。しかも、上りでもかなり速度が上がるので、しっかりとコーナーを攻めることができる。
何台かを乗り比べると、MTBを得意とするスポーツバイクメーカーと、Eバイク専門ブランドとの志向の違いがあっておもしろかった。スポーツバイクメーカーのeMTBは、総じてサスペンション、変速、ハンドリングの性能が自然で、最新のMTBと比べても遜色ないレベルの高い走りを楽しめる。しかも、アシストの効き具合がパワフルな印象だ。これに対して、Eバイクのブランドはアシストの効き具合がスムーズで、初心者が乗っても、恐怖感を覚えることなくトレイルを散策できるよう仕上げられている。メーカーごとの味付けの違いは、アシストのないスポーツバイクよりも大きいように感じた。
ボランティアの力と寄付金で運営される里山のMTBトレイルパーク
続いて今回、試乗会の舞台になった大杉MTBトレイルパークについて紹介したい。パークがある場所は、長年に亘り放置されていた地元の共有林で、地権者が県の補助金を利用して整備。しかし、その後、管理する人がみつからず、困っていたところに、地元のマウンテンバイカーが申し出て、里山を管理しながらMTB専用のトレイルパークとして利用する許可を得た。2016年から整備を開始。現在のコース総距離は3km以上。「初心者と子供に優しいMTB普及のためのコース」というコンセプトで、計10コースが整備されている。
ユニークなのは、その運営方法だ。コース使用料はなんと無料。コース入口には、募金箱があり、利用者はそこに投げ銭(寄付)をする方式をとっている。その寄付金で、コース整備をするための機材や燃料代を捻出しているそうだ。コース整備には、多数のボランティアが集まり、今もその力を借りて、コースコンディションがしっかりと維持されている。
子供と一緒に気軽に出かけられる敷居の低さが魅力
無料であること、名古屋、一宮など人口の多いエリアから近いこと、そして、子供でも安心して楽しめる敷居の低さ。以上のことから、来客は親子連れが多く、半日ほどここで遊んで、あとの半日は別のことをして過ごすなど、上手に遊んで帰る人が多いそうだ。名古屋周辺には、10か所近いMTBパークがあるが、大杉MTBトレイルパークほど敷居の低い場所はない。MTBを買ったはいいが、どこで走ったらいいかわからない。子供と一緒にトレイルを走ってみたい。そんな人は、ぜひ出かけてみてほしい。
モトベロ星が丘
愛知県名古屋市千種区星が丘元町14-25 星が丘テラス WEST 1F
TEL:052-753-7368
営業時間:11:00~19:00
大杉MTBトレイルパーク
運営:岐阜MTBトレイルプロジェクト(https://gmtp.mystrikingly.com/)