2024年4月6日から7日、東京都江東区にある東京ビッグサイトにて「サイクルモード2024」が開催された。このイベントではeバイクエキスポというeバイクの特設コーナーが設けられているので、本稿ではeバイクエキスポに展示されていた車両を中心にeバイクの新しい情報を紹介していこう。
電動化の新視点を公開/ヤマハ

ヤマハブースは現在発売中のeバイク展示のほか、2台のコンセプトモデルを展示した。
クルマやオートバイのショーでは将来の技術やアイデアを盛り込んだコンセプトモデルの展示はよくあることだがeバイクのショーではまだ見かけることはない(発売予定の新型車の展示はある)だけに新しい展示方法と言えるものだった。
Y-01W AWD

コンセプトeバイクの「Y-01W AWD」。ヤマハらしい前衛的なデザインがされたフレームワークも目を惹くが注目点はそこだけではない。このeバイクはBB部に付くセンタードライブユニットに加えてもうひとつ、フロントホイールのハブ部にもドライブユニットが装備される「両輪駆動」モデルで、アドベンチャーeバイクという新たなカテゴリーに設定されている。
ドライブユニットのスペックは公開されていないが、それぞれのモーターはコントロールユニットで協調制御されていて、走行条件に応じたトルク配分がされるという。
例えば未舗装の上り坂では、従来の後輪駆動ではトルクによるホイールスピンによって車体が振られたりすることもある。また、坂道発進でもリヤがホイールスピンすることで発進しにくい(できない)こともあるが、フロントの駆動があると前でも引っ張ってくれるので悪条件でも車体の安定度が高まり走破性も高まるのだ。
また、フロントにサスペンションと駆動力があると、独特の荷重移動によりフロントタイヤのグリップを高めることもできるので、従来とは違ったライディングスタイルが体験できるだろう。






Y-00Z MTB

「Yamaha Motor Off-Road DNA」をコンセプトに開発されたeMTBの技術提案を盛り込んだ車両。
特徴はドライブユニットの構造を変更している点。モーター部とギヤ部を縦に重ねるよう分割してスリム化を図りつつBB部の上にセット。これによりフレームワークに自由度が生まれ、チェーンステーを短くできたことからコントロール性向上などの効果が期待できるという。
また、BB周辺にもスペースができたので、ダウンチューブ内に収めてあるバッテリーの搭載位置をBB部に寄せることで低重心化も図っている。
さらに電動アシスト自転車の「パス」に搭載されるEPS(電動パワステ)も採用。この機能はハンドルを切る動作をサポートするというより、外乱によってハンドルが取られることを抑制するステアリングダンパーとして機能する。オートバイのモトクロスバイク(競技用)でもすでに採用しているという。







ゼオルトシリーズに子供用eバイクが登場/パナソニック サイクルテック

パナソニック サイクルテックのブースでは同社のeゼオルトシリーズが展示されていた。そのなかで注目したいのが子供用eバイク「SJF」と大人向けの「S3F」の2モデルだ。
「親子でサイクリングを楽しみたい」という声を受けて開発されたモデルで大人向け、子供向けともに同じデザイン、コンセプトで作られているのが特徴。とくに子供用eバイクは業界的にみても珍しいもの(スペシャライズドに子供用eMTBがあるくらい)であり、日常使いができるモデルとなるとSJFが業界初となるだろう。
SJFは対象身長が135cm以上と小学生から乗れるもの。この年代の子供は体がまだ小さいので、通常のペダルバイクでは親子のサイクリングをしようにも、ルートや走行時間に制限が生まれてしまうが、eバイクであれば子供に無理をさせすぎることなく行動範囲を広げることも可能になる。
それになにより、小学生という貴重な時期に見るもの感じるもの、それに連帯感も生まれる運動を共有できるというサイクリングならではの体験ができる意味は大きい。ゼオルトSJFとS3Fがあることでの日々は親御さんにとって価値あるものなるのに違いない。






新型eMTBを展示/ベスビー

昨年は話題となったAI搭載のスマートeバイク「スマーロ」を発表したベスビー。今年は新型のeMTBを目玉として展示していた。
ベスビーはグローバルな企業なので欧州にもチームが展開されているが、今回発表されたモデルはeバイク文化の進んだ欧州チームが設計、デザインを手掛けたものだけにeバイクの本場における最新ニーズに応えた作りとなっている。


その1台が「TRS1.3」。このモデルはeMTB界のオールラウンダーという位置づけなので、前後に160mmのストロークを持つサスペンションを装備。荒れた地形を走る際でもライダーへ負担を軽減しつつ、高いトラクション性とコントロール性のよさを実現している。
ドライブユニットには日本の法規にあわせてシマノのステップスE8080を搭載。バッテリーは626Whでフレーム内に収められている。車重は26.3kg(S)と発表されている。価格は69万8000円








タフなニューモデルを展示/ブルーノ

チャイルドシートが安全に装着できるタフな作りで人気のeバイクを発売するブルーノ。今回のブースではニューモデルを展示していたが、本当に「作ったばかり」という状況だったことから、発売時期だけでなく、モデル名もまだ未定とのことだった。
タイプとしてはブルーノが得意とするカーゴeバイクでフレームワークは道具っぽさを持つ無骨なデザインを採用。ただ、スカートを履いた女性でも乗り降りがしやすい形状としている。
ドライブユニットはシマノのステップスでバッテリーもシマノ製。最近では少数派になった外付けタイプだがこのバッテリーはリチウムイオンバッテリーでは避けられない劣化もあまり見られないし、他の同スペックのバッテリーと比較しても「持ち」がいいとかなり優秀なもの。そうした理由からブルーノは新型にもこのバッテリーを使用。タフなイメージのeバイクにぴったりのチョイスだ。
そして子供を乗せた状態の車重であってもしっかりとした制動力が得られるよう前後ブレーキはディスクとなっていた。



堂々と乗ることのできるファットタイヤeバイク/サイクージャパン

こちらはサイクージャパンが展示していたニューモデル「サイクー・ ゴーストファットバイク」。
最近問題になっている電動車(一見するとeバイクだがペダルを漕がなくてもアクセルオンで走る)にはファットタイヤを履いたストリート系のモデルが多いが、電動の方式はともかく「スタイルがカッコいい」という理由で乗る人もいる。
そこでそのような視点を持つ人が違法なものを選ばないで済むよう「かっこよくて法令にあったeバイクを提供したい」という考えで導入したモデルとのこと。
リヤモーター式でもちろん法令に沿った仕様。走行モードはエコ、標準、強とあり、走行可能距離はエコで約62km、標準で約53km、強で約45kmとなっている。


走りながら発電&充電できる回生電動アシストシステム/太陽誘電

去年も出展していた太陽誘電株式会社の回生電動アシストシステム。今年のブースではシステムの名称を「FEREMO(フェリモ)」としていた。
モーターは電気を内部のコイルに流すことで軸を回転させるが、この仕組みはクルマのエンジンに付くオルタネータ(発電機)とほぼ同じであり、また、自転車でもタイヤにローラーを押しつけて発電するダイナモもその一種。つまりモーターは使い方によって発電する能力もあるので、その機能を持ったモーターを回生モーターと呼ぶ。
そしてモーターが作った電気をコントローラーでバッテリーに戻すことで「走りながら充電できる」という状況を作れるのだ。ただ、使った分をすべて補えるまでの効率はないので、やはり定期的な充電は必要だ。
とはいえ走りながら充電しているだけに、一充電での走行距離は確実に伸びるので充電の回数は減るし、走行中も継ぎ足し的に充電されるのでより遠くまでアシストが使えるようになる。
なお、無風、平地などアシストの必要がない条件では、アシストをオフにして回生での充電のみにするモードもあるので、その機能を使うとさらに走行距離を伸ばすこともできるのだ。
それにeバイクメーカー側にとっては現状よりバッテリーを小さくしても同等の走行距離が得られるなら、バッテリーを小型にして軽量化を図ることも可能になるし、フレーム設計の自由度も上がるので、デザイン性に振ったものからeバイクのトルクを生かせるジオメトリーの追求などもできるだろう。
このようにeバイクの発展に確実に生きてくる太陽誘電のフェリモは今後の発展がとても楽しみな技術なのだ。

新しいeバイクメーカーも出展/グッドシェイプ

eバイクは新しい市場なので新しいメーカーが参入しやすい。グッドシェイプもそのひとつでこちらは日本のメーカー。
製品については日本で企画、設計を行っている。生産は海外の工場に委託するが、現地でのクオリティコントロールをしっかり行うので品質には自信があるという。
グッドシェイプは代表がアメリカンビンテージものが好きであり、イラストを描くのが得意だったことから、最初に手掛けたモデルがビンテージバイク風のeバイクだった。その後もオリジナルのデザインでeバイクを開発、販売していき、最新モデルが写真にあるファットタイヤを履いた「ZORO(ゾロ)」となる。なお、ゾロは道路交通法に準ずるアシスト比率を持ち、日本の法規にあう作りなので安心して乗ることができる。
グッドシェイプ社のように「同じ趣味の人にはとくに刺さる」というスタンスでeバイクを作るメーカーが登場してくるのは、新しいジャンルであるeバイクらしい展開。自転車メーカーを作りたいと考えている人がいたらいまeバイクメーカーを立ち上げるといいかも!?

興味津々の両立てスタンドアダプター/カイセサイクル

ロードバイクやMTBはスポーツ性を重視するので基本的にスタンドは付けないが、スポーツバイクであっても荷物を積むツーリングバイクやふだん乗りでの使用が多い場合ではやはりスタンドはあったほうが便利だ。
でも、よくあるキックスタンドでは荷物が多かったり、路面が斜めのときは不安定だし、チャイルドシートを付けたいときはなおさら安定感は欲しい。
そんな条件になるとズバリ、両立てのスタンドが適しているが、この手のスタンドは実用車向けに作ってあるので、ミニベロ、クロスバイク、ロードバイク、MTBなど各eバイクに装着できるものでなかった。
ところがそれを可能にしたのが東京都台東区にある自転車店の「カイセサイクル」だ。製品の見た目は多少のゴツさが感じられるが、作りは細部までこだわったもので、例えばアクスルが通るスペーサー。内径、外径とも既製品ではアクスル部にたいして寸法が少し合わなかった(それでも使えるが)ので、設計者の理想にピッタリ合うサイズのものをオリジナルで作った。
また、材質は高品質のアルミ材だがアルミフレームモデルに使われるアルミ材より少しだけ柔らかいものにすることで、締め込んだり擦れたりしてもフレーム側に影響がないようにしている。
そしてアダプター本体は長期に渡る試験の末、最適と判断した鋼材を2枚重ねで使用する(溶接法にもこだわりがある)ことで、ハードに使っても曲がったり破断しない作りとしている。
フィッティングについても様々な車種にたいして「適正な位置」に付けられるよう調整幅を持たせているなど、製品を見るだけではわからない「道具」としての真剣な作り込みがされていた。
今回はスペース的に製品を深くまで解説できないが、このアイテムは逸品と呼べるものだった。機会があれば改めて取材したい。なお、「カイセサイクル」で検索をすると製品紹介が見られるので興味のある人は検索して欲しい。


愛用しているヘルメットにBluetooth会話機能を追加/セナ

スマートヘルメットをリリースする「SENA(セナ)」が出展していたあと付けタイプのBluetoothインターコム「PI(パイ)」。
いま使っているヘルメットのストラップに取り付けるタイプで、2台以上揃えるとBluetooth通信により携帯電話のように「話す」「聞く」がハンズフリーで行えるようになる。
また、1台でもスマホと接続するとスマホナビの音声やスマホ内に入れている音楽をパイから聞くことができるが、パイはイヤホンのように耳を塞ぐものではないから、走行中に聴き取るべき環境音はふつうに聞くことができるのが特徴。価格は1万9360円(1台)。

