オフロードレースイベント 「SPECIALIZED RACE DAY in木更津 2023」レポート

主催:SPECIALIZED RACE DAY in木更津 2023 実行委員会
運営:ダイナコ
プロデュース:SBC

スペシャライズドレースデイ2023
2022年より始まった、eMTBやeグラベルバイクが参加できるオフロードレースイベント「SPECIALIZED RACE DAY in木更津 2023」が今年も開催された

2023年12月16日~17日の2日間、千葉県木更津市にある「YouPort」にて、eバイクも参加できるレースイベント「SPECIALIZED RACE DAY in木更津 2023」が開催された。

この「SPECIALIZED RACE DAY in木更津 2023」は今年が2回目の開催。コースとなっている千葉県木更津市の「YouPort」は広大な敷地を持つキャンピングカー向けのレジャー施設(現在は建設中で2024年オープン予定)で、その広い敷地内にMTBが周回できるオフロードコースが常設されている。ただし、現在一般公開していないというもの。そんな場所ながらSPECIALIZED RACE DAY in木更津 実行委員会は使用が許可されているのだ。

スペシャライズドレースデイ2023
「SPECIALIZED RACE DAY in木更津 2023」はスペシャライズド・ジャパンが協賛している。2回目の開催になる今回は昨年から続くMTB3時間耐久のほかに2時間のグラベルエンデュランスが追加された

eグラベルバイクのエンデュランスレースも

今回は去年も行われた「MTB3時間耐久」に追加して、フラットな部分が多いロングコースを2時間走る「グラベルエンデュランス」も開催した。

イベント全体の参加者は多いのだが、まだ始まったばかりなので、eバイク乗りに対しての知名度はまだまだ。開催されていることが広まっている最中なのでeバイクの参加はまだ少ない。

しかし、会場のYouPortのコースは初心者から上級者まで楽しめるものでありつつ、整備状態がいいのでオフロードコースながら「これは危険」と思うような箇所がない。

また、都内からのアクセスもよく、きれいなトイレがあるなど設備はいいし、かなり豪華なケータリングサービスもある。それに開催期間中は会場内でのキャンプもできるなどレース以外にも楽しみが多いイベントなので今後はどんどん人気が出てくるだろう。

ケータリングのメニュー
YouPortはアウトドア施設だが、グランピングサイトが多くあったりや大型キャンピングカーの受け容れもするだけに設備もよくケータリングサービスも豪華だ
テント
土日開催だったので、土曜の夜はそのままキャンプができた
木戸脇代表
スペシャライズド・ジャパンチームも参加。こちらはスペシャライズド・ジャパン代表の木戸脇さん。スペシャライズドでもMTBの売り上げは伸びていて、eMTBも同様に人気が高まっているとのこと。そこでスペシャライズド・ジャパンとしてはユーザーが楽しめようMTBやeMTBが参加できるイベントは増やして行きたいとのことだった

グラベルエンデュランスとMTB3時間耐久、それぞれの特徴

グラベルエンデュランスとは、eバイクを含むグラベルバイク、MTB、シクロクロスバイクが参加できる2時間の耐久レースで、コースは「YouPort」の広大な敷地(オールグラベル)をレース時間内で周回するもの。参加方法はソロもしくはチームとなっている。

コースマップ
クローズドされた広大な敷地を使用するレース。グラベルエンデュランスとMTB3時間耐久では違うコースが設定されていた

グラベルエンデュランスのコース全長は3.5km。フラットな部分とアップダウンを織り交ぜるてはいるが、割合としてはフラットな部分が多い。そのためeバイクでもアシスト領域外(時速24km以上)の速度域で走ることが多くなる。

今回、eバイク勢は全車eMTBだったが、eMTBはギヤ比の関係で巡航速度を高めにキープするのは大変だ。それだけにこのグラベルエンデュランス向きと言えない感じだった。

では、どんなeバイクがあうかというと、アシストがありつつ、アシスト領域外の速度も保ちやすいグラベル走行ができるeロードバイクが向いているはずだ。それにコースは未舗装ではあるが、路面はほぼフラットなのでその点もロードバイク向きだ。

これまでグラベル向きeロードバイクが活躍できそうなオフロードレースイベントはほぼなかっただけに、乗っている人や乗りたいと思う人にとってグラベルエンデュランスが始まったのはうれしいニュースだろう。

山口さんと原田さん
グラベルエンデュランスに参加した山口さん/原田さんのチーム。バイクは山口さんが所有するトレックのレイル9.7。ペアクラスはひと組のみだったのでクラス1位。総合は30位

グラベルエンデュランスは取材日の前に日に開催されていたので走行シーンを撮影することはできなかったが、キャンプ泊をしていた参加者が残っていてくれたのでインタビューさせていただいた。

まずは山口さん(左)と原田さん(右)のチーム。山口さんはふだんMTBでのダウンヒルもしているオフロード派。山に入るのが好きだがやはり上りはきついためeMTBを購入したという。バイクはトレックのレイル9.7で、eMTBではトレイルやツーリングツアーをeMTB仲間と楽しんでいるということだった。

レースの印象を伺うと、速度が出るコースだったのでアシストが入らない時間も長く、eMTBのメリットが出にくいと感じたという。それでもコーナーからの立ち上がりや上り区間ではメリットが生きる場所はあったので走りは楽しめたようだ。

山口さんと原田さんのクルマ
山口さん、原田さんは土曜日に行われたレース後にそのままキャンプをしていた。eMTBのほかロードバイク、MTB、そして大型のオートバイも所有しているという
松橋さん
グラベルエンデュランスに参加の松橋さん。順位はクラス3位。総合では51位。バイクはメリダのeONE.SIXTY

この日はもう一人、グラベルエンデュランスの参加者に話を聞くことができた。こちらはソロで参加していた松橋さん(e-MTBレーシング研究会)。バイクはメリダのeONE.SIXTY9000で、ドライブユニットはシマノのSTEPS E8080を搭載する。

レースに感想を伺うと山口さんチームと同じく今回の速度が出る区間が長いコースではアシストのメリットがあまり使えなかったという。そのためこちらも2時間走ってもバッテリーは2目盛り減ったくらいとのことだ(レース前の試走も含む)。ただ、eONE.SIXTY9000は車重が軽いので、アシストが入らない時間が長いコースでもMTB勢(グラベルロードバイクは別格)とそれほど大きな差はないと感じたようだ。とはいえ想像と違う印象だったので、来年はeMTBの特性を生かせるMTB3時間耐久へ参加したいとのことだった。

サポートする松橋さん
松橋さんは会社の仲間と「e-MTBレーシング研究会」というグループを作っている。日曜日はMTB3時間耐久に参加する仲間のサポートを行っていた

MTB3時間耐久

さて、次はMTB3時間耐久。グラベルエンデュランスより一周の距離は短いが、グラベルエンデュランスよりもアップダウンを多く取り入れているのでeバイク向けのコースになっている。

また、低速まで速度が落ちるコーナーも多いので、eバイクならではの立ち上がりのよさも生かせる設定と言える。

そして今年からはBMXレーシング(オリンピック競技)でも使われるような起伏やパームなどテクニカルなセクションが追加されたことで、パワーだけでなく走行ラインの取り方を考えるという楽しみも追加されていた。

そんなコースを3時間に渡り周回するのだが「SPECIALIZED RACEDAY in木更津 2023」自体がエンジョイ系のイベントであり、上級者のマナーもよく初心者に追い付いたときも声がけしつつ上手に抜いてくれる環境なので、レース経験があまりない人でも参加しやすいものである。また、コースは走りがいがありつつもアシストのあるeバイクであれば走破できるものなので、体力、テクニック面でいまいち自信がないという人でも大丈夫だ。

コース
オリンピック競技にもなっているBMXレーシングのコースから、段付きのある起伏やパーム(すり鉢状のカーブ)といった要素が取り入れられていた
土で作られたパーム
土で作られたパーム。バンクになっているのでいろいろな走行ラインが取れるが、次のセクションのことを考えたラインを取ることが求められる
2段階で上る丘
パームのあとは2段階で上る丘をクリアする。勢いをつけて進入しないとeバイクでもキツイ感じ

MTB3時間耐久 eバイクチーム

ここからはMTB3時間耐久に参加したeバイクチームを紹介しよう。eMTB2名チームで参加していたのはヤマハ YPJ-MT Proに乗る澁川さんと、スペシャライズド LEVO SLの工藤さん。お二人はグラベルエンデュランスのところで紹介した松橋さんと仕事仲間で「e-MTBレーシング研究会」というグループで活動している。昨年はお仲間が所有するトレック・レイル(本国仕様)をシェアし、グループ全員でMTB3時間耐久に参加していたが、今年はそれぞれでeMTBを購入したので、愛車での参加になったという。

澁川さん
オートバイやペダルバイクのMTBも所有する澁川さん。バイクはヤマハ YPJ-MT Pro。eMTBを購入したのは乗り手のカラダに優しいという面から。アシストもそうだしフルサスモデルにしたのもその理由。また、カラダに優しいという考えからサドルもクッション性のあるものとしていた
工藤さん
スペシャライズド・LEVO SLに乗る工藤さん。工藤さんもオートバイに乗る2輪好きの方だが、2輪に乗るときは速さを感じるよりも操作を楽しむことに重きを置いているという。そこで漕ぐことに一生懸命になりすぎず、トレイルコースをうまく楽しく走ることに集中できるeMTBに乗っているとのことだった
スタートライダーの澁川さん
スタートライダーは澁川さん。こうした低速コーナーからの立ち上がりが楽で速いのもeMTBの利点
澁川さん
アシストモードは5つあるうち上からふたつ目のターボを使用。3時間を2台で走るのでバッテリーの持ちは心配なかったが、走行後にチェックすると2メモリ減っていた
工藤さん
工藤さんのLEVO SLも軽量なeMTBなので抑えが必要な箇所でも乗りやすそうに見えた
工藤さん
このクラスはひと組のみの参加だったのでクラス1は確実。しかしそれでは満足できないと言うことで、お二人ともかなり攻めていた。結果、e-MTBレーシング研究会は総合でも9位となった。お二人とも60歳代とのことだけにこれはすごいリザルト
山路さん
山路さんはパナソニックが最初に発売したXM1を発売直後に購入したeMTB歴が長い人。ふだんはトレイルランを楽しんでいて、eMTBが参加できる大会は参加するようにしているそうだ.今回はクラス1位に総合で29位

次に紹介するのはソロでの参加の山路さん。バイクは日本で最初に発売されたeMTBのパナソニック XM1。新車で購入して乗り続けているとのこと。ほかにペダルバイクのMTBやロードバイクも所有しているそうだが、よく走りに行くトレイルコースは上りがきついので、そういった場所ではeMTBを愛用しているとのこと。また、eMTBに乗ってからは上りが楽しなったという。これはアシストがあって登りやすくなったと言うことだけでなく、余裕が出たから「どうやって攻略しよう」と考えることができるようになったことを含んでのことだそうだ。そんな山路さんはすっかりeMTBが気に入っていて、参加できるレースがあると走りに行くなど積極的にeMTBを楽しんでいる人だった。

山路さん
ひとりで3時間走るのでバッテリー交換の予定をしていた。最初は後発モデル用の容量の多いバッテリーを付けていたが最後の30分でやはり交換となった
アシストが止まる
途中でモーターかバッテリーにエラーが出てアシストが止まってしまうトラブルが出たが無事復旧
山路さん
eMTBはタイヤの抵抗が気にならないので、トラクション性能とクッション性を向上させるためリヤタイヤを太くしている。そのおかげでハードテイルだがホイールスピンはある程度抑えられていて乗り心地もいいという
ゴールシーン
3時間経ってのゴールシーン。総合優勝はMTB2名チームの安馬さん/永田さんのCollina Z
ゴールする工藤さん
e-MTBレーシング研究会の工藤さんもゴール
ゴールする山路さん
山路さんもゴール

各カテゴリーの表彰

MTB3時間耐久 e-MTB2名チームの表彰式
MTB3時間耐久 e-MTB2名チームの表彰式。エントリーチーム名「e-MTBレーシング研究会」の澁川さん/工藤さん
MTB3時間耐久 e-MTBソロの表彰式
MTB3時間耐久 e-MTBソロの表彰式。エントリーチーム名「ウィンウィン言ってる」の山路さん
MTB3時間耐久 4名チームの表彰式
MTB3時間耐久 4名チームの表彰式
MTB3時間耐久 3名チームの表彰式
MTB3時間耐久 3名チームの表彰式
MTB3時間耐久 2名チームの表彰式
MTB3時間耐久 2名チームの表彰式
MTB3時間耐久 キッズチームの表彰式
MTB3時間耐久 キッズチームの表彰式
MTB3時間耐久 ソロ女子の表彰式
MTB3時間耐久 ソロ女子の表彰式
MTB3時間耐久 ソロ男子の表彰式
MTB3時間耐久 ソロ男子の表彰式
ダイナコ代表の内嶋さん
運営をした株式会社ダイナコ代表の内嶋さん。このイベントは全国で開催されていてMTBに乗っている人同士、一緒に楽しもうという趣旨のもの

という結果になったSPECIALIZED RACE DAY in木更津 2023。最後にイベントを運営した株式会社ダイナコ代表の内嶋さんにコメントを頂いたのでそれを紹介しよう。「SPECIALIZED RACE DAY in木更津 2023はeMTBの参加も歓迎ですが、まだエントリーが少ないので今後はもっと増えて欲しいです。eバイクといっても日本の法規に沿ったものであればアシストは時速24kmまでなので、eバイクに乗ったから有利かということはありません。だけど人によってはeバイクだったから3時間楽しく走れたと言うこともあるのです。バッテリーマネージメントをしながら後半のスパートに掛ける、なんてことはeバイクだからできる走りですし、ゲーム的な要素でもあって面白いと思います。そんな感じでペダルバイクとはまた違ったレースが楽しめるeバイクでの参加をお待ちしています!」とのことだ。

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