ふたり合わせて123歳。妻のヒロコは61歳にして生まれて初めての長い自転車旅、それもいきなり日本一周。果たして最後まで走り切れるのか!? 未知の部分は大きいが、だからこそチャレンジ、だからこそ不安と期待、楽しみと感動があるはず。夫婦珍道中のはじまりだ♪
DAY01
2023年6月8日。出発の朝。ここまでそれなりに準備を進めていたつもりだったが、当日になっても「あれがない」「これはやっぱり持っていかない」などひっちゃかめっちゃか。荷物を全てパッキング積載、出発の準備が整った時にはすでに10時を回っていた。
ヒロコはこれほど多くの荷物を積んで走るのは初めて、あまり無理の掛からないよう、初日は埼玉県毛呂山町まで、およそ60kmに走行距離を抑えた。
こぎ動き出すとペダルはずっしりと重く、ハンドルを支えるのも大変。ヒロコのことばかりを心配、自分のことをコロっと忘れていた。二人のキャンプ用品や予備バッテリーなどフルパッキングしたワバッシュは想像以上に重く、数km走っただけで、この旅が体力勝負になることがわかった。
交通量が多い国道は疲れるので、車の少ないローカルな県道をつないで、高尾、日の出、青梅と進んでゆく。青梅は猫の町として有名で、あちらこちらの壁に猫の絵や、猫をモチーフにした看板、オブジェなどが飾られていた。自転車で散歩しながら猫ART探し。ところが残念なことに本物の猫には一匹も出会えなかった。
青梅の町を出ると険しい上り坂が始まった「えーっ、また上り坂なの〜」ヘルメットについたインカムのスピーカーからヒロコの声が響く。「今日はこれが最後の峠だから、頑張って♪」と声をかける。
午後5時半。予約していた宿に着いた。63km走ったんだから旅の初日、ヒロコとしては上々の出来だ。宿のある毛呂山は小さな町だが、意外と飲食店が多かった。宿主さんが教えてくれた「毛呂山食堂」へ行き、名物の「焼きそば」と「豚肉の親子丼」を注文。焼きそばは短めの麺にソースが絡んでいてとても美味しい。具材はキャベツだけとシンプルだが、満足感は高かった。
部屋に入ると充電の嵐。eバイクのバッテリー、ヘルメット、スマホ、アップルウオッチなどをコンセントに挿し込み。ようやくホッと一息という感じだ。
僕は鈍った体で久しぶりに荷物満載の自転車をこいだからか、思っていたより疲れた。ヒロコはそれ以上に疲れているようで、シャワーを浴びて、横になると泥のように眠った。
●宿泊地:埼玉県毛呂山町
●走行距離:63.3km
DAY02
起きると体のあちこちが痛い。ヒロコも同じようで、体を動かすたびに「んー」とか「うー」とか唸っている。ただ筋肉痛はそれほど感じないのは救いだ。パッキングはバッグに荷物を分けて選んで入れ終わるまで、かなり時間がかかった。まあ、これは回数を重ねれば自然と慣れて早くなるだろう。
今日の目的地は群馬県伊勢崎市。決めた理由は簡単、一番安いホテルが見つかったから(笑)。昨晩から雨が降り始め、早朝まで続いたが、出発の準備が整う頃には上がっていた。
八王子と高崎を結ぶ八高線と並行するのように伸びる県道で北へ向かう。民家あり、田畑ありのローカルな道だが道幅が狭く車が多い。自転車通行可能な歩道がある時はそちらを走ったりするが、あまり管理されていないようで、時々ジャングルのように雑草が生い茂っていたりする。そんな歩道を「俺たちは探検隊かっ!?」とふたりでツッコんだ。
昼はスーパーで買った安いお弁当と稲荷寿司を、道沿いに見つけた道の駅風の施設のベンチで食べことにした。ヒロコは「ビワがメチャクチャ安かったわ♪」と喜んで買ってきたが、味の方は残念ながらイマイチ。肩を落としていたので「次またどこかで美味しいフルーツを買おう!」と励ます。
毛呂山から越生、小川町、寄居と進み、美里町から本庄方面へ向かう。徐々に景色は平野になり、道もまっすぐになってくる。水を張った田圃も目立つようになる。
利根川に出ると自転車があったので入ってゆく。夕方の5時過ぎ。首都圏の自転車道路は散歩をする人などで賑わっている時間だが、誰もいなくてまるで貸切状態。気持ちよく進んでいった。
6時過ぎビジネスホテルに到着した。ホテルではどこに自転車を保管するか、超重要なポイント。受付へ行くと外国人スタッフだ。置き場を確認すると自転車は建物の脇への一点張り。外へ出て確認すると、人から見えない場所でワイヤーロックを繋ぐ鉄柱もない。町中なので盗難が心配。どうしようか悩んでいるとヒロコが「私がちょっと聞いてくる」とって受付へ向かった。
しばらく外で待っていると、出てきて「中の倉庫に入れてくれるって」という。そんなことができるの? すごい、それなら安心だ。でも一体どんな交渉術を使ったんだろう? なんだかヒロコが魔法使いに見えてきた。後から現れた責任者はスリランカ人で日本語がベラベラでとても優秀そう。にこやかな笑顔で倉庫を案内してくれた。
夜は何か伊勢崎らしいものを食べたいと思ったが周囲にあるのはチェーン店ばかり。仕方なく隣のサイゼリヤで済ませることにした。
●宿泊地:群馬県伊勢崎市
●走行距離:58.3km
DAY03
今日は群馬県渋川市の道の駅でeバイクを借りているヤマハのライダー向けのイベントが行なわれるらしい。僕たちの日本一周の旅を取材したいというので、渋川の道の駅まで行く事にする。
ホテルを出ると大きく「伊勢崎オート場」と書かれた場所があった。ギャンブルはしないのだが名前は聞いたことがあったので、どんなところか行ってみることにした。大きなゲートがあったので、中を覗くと少し先に観客席とサーキットが見えた。いつかレースを見てみたいなぁ。
また、ゲート前の広場には仮設サーキットが作られていてミニバイクがズラッと並んでいた。近くにいた人に話を聞くとキッズライダースクールが開かれるという。確かに、今のこどもはバイクに乗る機会は少ないので、こういうイベントはライダー人口を増やす、いいきっかけになるかもしれない。
町中を抜けて利根川自転車道に出た。川はほとんど見えないが、自転車道路はどこまでも続いている。道は住宅地の横、整備された公園の中、林の間、グランドの脇など目まぐるしく変化。珍しく乗馬場もあり、子供たちが楽しそうに乗馬を楽しんでいた。
すれ違うのは地元のロードバイクばかりだったが、珍しく僕たちと同じように荷物を満載した自転車が前方からやって来た。声をかけるとドイツから来たZINTELという人で、アジア各地を自転車で旅しているという。僕たち夫婦が以前ヨーロッパを旅した時のことや、アジア各地の交通事情など、おしゃべり。旅に出て初めて会う自転車旅人なので自然とテンションが上がった。
昼過ぎ、渋川にある「道の駅こもち」に到着した。ヤマハのスタッフさんにご挨拶をしてから、道の駅でランチ。僕は焼肉定食、ヒロコは地場産季節の天ぷら定食を堪能。その後ライター&カメラマンの撮影取材となった。
一通り終わると再び旅人へ戻り、宿を目指した。ホテルにチェックイン。肝心の自転車保管問題は、今回はスムーズで室内にレンタサイクルを保管している場所があり、そこへ置かせてもらえる事になった。ただ、心配なのは明日の天気予報が雨なこと。なんとか本降りの雨にならないことを願いつつ、ベッドに入った。
●宿泊地:群馬県渋川市
●走行距離:40.8km
DAY04
朝起きてカーテンを開けると黒い雲、地面が雨で濡れている。「くそー雨だーっ」。明日は最初の難関、三国峠越えなので、今日中に少しでも進んでおきたい。レインウエアを着込み沼田へ向かって走り出した。
国道17号がメインだが、調べると交通量の少なそうな道があったので入ってゆく。民家が点在するローカルな道から徐々に自然に囲まれた道になってくる。交通量は激減、ほとんど対向車もいなくなった。ルートにはさらに古い鉄道の鉄橋があったり、狭いトンネルがあったり、予想外に楽しい。雨が上がると同時に旅気分も上がって行く。
沼田より先は安い宿がないので、今日は30km先の沼田まで。だたそれだとあまりに早く着いてしまうので、ルートから少し外れた場所にある「道の駅あぐりーむ昭和」に立ち寄る事にした。
そこへ向かう道が運悪く上り坂。それでも体力が余っていたので、スムーズに上ることができた。軒下にeバイクを止め、レインウエアを脱ぐと、開放感が広がる。ちょうどお昼の時間だったので食堂へ。名物のおっきりこみを食べてみようと思ったがまさかの「売り切れ」、ならばと僕は「カツカレー」、ヒロコは「煮込みカレーうどん」を注文。腹ペコのお腹をカレーで満たした。
今日は長袖の上にレインジャケットを着て丁度いい気温。6月とは思えない寒さだ。沼田のビジネスホテルには3時過ぎに着いた。受付へ行くと若い20代の青年が対応してくれた。自転車の話をすると臨機応変の対応能力の高い青年で、すぐに部屋に自転車を入れること許可してくれた。
雨は夕刻にはすっかり上がっていた。気になっていた明日の天気も雨マークがなくなり曇りマークに。雨の中の峠越えだけは避けたかったのでホッとした。ヒロコはかなり前から1000m級の峠を越えるのは初めて、さらに雨が降るかもしれないとわかり、かなりナーバスになっていたので、本当によかった。
●宿泊地:群馬県沼田市
●走行距離:31.0km
★現在『夫婦で行くE-BIKE日本一周の旅』のクラウドファンディングを実施中。ぜひ旅の夢と感動を共有しましょう! ご支援のほどよろしくお願いいたします。
https://camp-fire.jp/projects/view/669580
取材協力:
ヤマハ発動機
https://www.yamaha-motor.co.jp/pas/ypj/
セナブルートゥースジャパン
https://senabluetooth.jp/
ステムデザイン
https://www.stem-design.net
武田レッグウェアー
https://www.rxl.jp