eバイク(YAMAHA WABASH RT/ヤマハ・ワバッシュRT)で日本縦断3700キロチャレンジ旅の後、自由気ままに旅した「北海道旅」のレポートです。
世界ツーリングの友人である浅野くんが築70年の廃校をリノベーションした『西興部ゲストハウスGA.KOPPER』。平屋木造の校舎はまさに田舎の中学校という感じで、長い廊下や木製の扉、机、椅子など、どこを見ても懐かしさが満載だった。ノスタルジー一辺倒と思いきや、宿泊室は超ユニーク。ドアを開けると全面白に統一されたおしゃれなロフト付きの部屋があったり、天然木を使ったテントの部屋があったり。極みは手造りの大きな木桶をベッドにした部屋、その名も「OKE」。おそらく世界で木桶のベッドがあるのは、世界でここだけだろう。とにかく遊び心とおしゃれが融合した、面白い宿なのだ。
浅野くんとは5年ぶりの再会、以前からここへ来てみたいと思っていたので、盛り上がった。さらに宿泊中には浅野くんが主催するカブのイベントにも特別参加。北海道各地から集まったライダーと旅トーク、夜は焚火を囲んでの宴会、旅とは違う時間を楽しんだ。日本縦断中は移動の連続だったので、数日間ゲストハウスに滞在をして、骨を休めた。




西興部を出ると国道239号を東に向かった。興部で国道238号にぶつかると、右折して網走方面へ。雄大なオホーツク海を左に眺めながらマイペースでペダルをこぐ。北海道は道幅が広く車も少ないのでeバイクの旅には最高だ。ただ、町と町の間が30km、40km離れていたり、さらにその間にはコンビニは一軒もないのが普通。そんなところも楽しいと思えるのが北海道。
稚内でテントを買ったのにまだ一度もキャンプをしていない。今日はキャンプがしたいなと思い、バッテリーの充電ができそうなオートキャンプ場を探したが、ルート上には見つからなかった。ならば今夜は充電はナシにして、サロマ湖畔にある『キムアネップ岬キャンプ場』まで行くことにした。ここは湖が目の前にある、開放的なシチュエーションにある無料のキャンプ場なのだ。バッテリーは2本あるので、一晩くらい充電しなくても何とか行けるだろう。
午後7時ごろ、ようやくキャンプ場に着いた。久しぶりに130kmも走った。6月の北海道、7時でもまだ明るい。湖畔にある開けたキャンプ場で、ソロらしきテントが2つあるだけ。とても静かだ。テントを張り終えると、来る途中で買ったパンをかじり、夕ごはんにする。ほかにすることもないのでスマホを見ているとウトウト…… 久しぶりに長距離を走り疲れたのか、眠くなってきた。
朝起きると新しいテントとオートバイがそばにあった。声をかけると関東の人で、30年ぶりの北海道ツーリングだと教えてくれた。懐かしい場所が変わってしまったこと、昔と変わらない景色があること、北海道の魅力を語り合った。歳が近かいこともあり、共感することが多かった。こんな風に様々な旅人と会えるのが北海道の魅力だ。


湖畔の道を走っていると『網走常呂自転車道』なるものを見つけたので入って行く。北海道は十回以上来ているがこの道を走るのは初めて。自転車道は深い茂みの中を走ったり、湖のすぐ近くを走ったり、変化に富んでいた。eバイクに乗っていなかったらこの道を走ることは一生なかったかもしれない、そう考えるととても幸運な気がした。
背の高い雑草の道を走っていると、前方でガサガサと大きな何かが動いた。えっ、動物!? 熊? 鹿? さらに進むと2羽のタンチョウヅルがいきなり現れた。想像以上の大きさにびっくりする。よく見ると2羽の間を小さな雛がチョコチョコ歩き回っている。親子だ。大自然に生きる野生動物に出会えたことに感動する。その後も『網走常呂自転車道』では綿がたくさん落ちていたり、倒れ木があったり、eバイクの旅だから出会える景色がたくさんあった。


能取湖と網走湖を走ると長かった『網走常呂自転車道』も終点となる。そのまま国道で網走市内と進んで行く。久しぶりに走る大きな町。ホテルやチェーン店が眩しく感じる。『道の駅流氷街道網走』に着いたのがちょうどお昼時だった。海のすぐ横にある道の駅で、2階に上がると食堂があった。メニューには『網走ちゃんぽん』、『網走ざんぎ丼』などが名物として並んでいるが、今回はシンプルに『かに飯』を選んだ。ほぐしたカニの上に「いくら」と「玉子焼き」が載った丼ぶり。味の方はまあ普通だが(笑)、軽く北海道気分が味わえたのでよしとする。
国道391号を東へ向かう。道に沿って釧網本線が延びているのだが、この辺りは風情のある駅がいくつかある。藻琴駅、北浜駅はどちらも寂れた木造駅舎で、映画のワンシーンにでも出てきそうな雰囲気。実際、映画「網走番外地」のロケに使われたらしい。また中国映画にも登場しているそうで、中国人の観光客も多く訪れるという。
『小清水原生花園』に立ち寄ると、6月下旬はちょうど見頃で、エゾスカシユリ、エゾキスゲなどが咲いていた。原生花園以外でも花を見かけることが多い。北海道はまさに花の季節を迎えている。今日の宿泊予定地『清里イーハトーヴホステル』に着いたのは午後5時。日本縦断の時は毎日8時ごろまで走っていたので、ずいぶん早い気がする。建物はおしゃれ。周りは広々としていて何もない、これぞまさに北海道の宿という感じだ。7時ごろから宿泊客が増えてきて、ラウンジは賑やかな笑い声に包まれた。泊り客は学生、カップル、年配旅行者、職業も年齢もバラバラ、いろんな人が泊っている。まさに旅人の交差点。賑やかな夜となった。



早起きして宿を出る。斜里を経由して国道334号でウトロへ向かった。海岸線の道はきれいで、遠くに知床半島の山々が見える、走っているだけで気持ちがいい。気分の良さからペダルが進み、あっという間にウトロに到着した。小さな港町でその真ん中にあるのが、怪獣のゴジラのような形をしたゴジラ岩がある。港をウロウロしていると『漁港婦人部食堂』の文字が目に入った。小さな店内を覗くとほぼ満席、どうやら人気の店らしい。空いている席に座り、ホッケ定食を頼んだ。出てきたホッケはとても大きく、脂がのっていて身もホクホク、とてもおいしかった。
次に向かうは『知床五湖』。国道を離れ知床公園線へ入って行く。しばらく走ると知床の美しい山々、谷間を流れる川、絶景が目の前に現れた。その後も知床五湖まで、流れる景色はダイナミックに変化した。時間がないので知床五湖の全部は巡らず、高架木道を歩いて行ける「一湖」だけ見学した。景色は雄大で素晴らしく、自然を満喫することができた。
国道に戻り、知床峠へ向かった。ひたすら上り坂が続くが電動アシストがあるのでいいペースで進める。知床五湖では晴れていたのに、少しずつ雲と霧が出てきた。知床峠に着いたときは完全に霧の中で、何も見えない。めちゃくちゃ寒く、鼻水まで落ちてきた。それでも、すぐまた晴れるだろうと高をくくり走り始めると、天気はどんどん悪化。霧は雨に変わり、あまりの寒さに体がガタガタ震え始める。
必死でハンドルを握り。寒さに耐えながら走り続けたので、羅臼の町が見えたときは本当にホッとした。これ以上走る気力はなくなっていたので、羅臼に泊まることにする。ネットで見つけた安宿に荷物を降ろし、濡れた服を着替えると、生き返るようだった。そのまま翌日も雨は止まず、結局羅臼で2泊することとなった。




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