eバイク旅ノート Vol.43 「旅ルポ★日本縦断3700キロ 05」石川県金沢市→群馬県沼田市

旅行家・藤原かんいちが30日間で果たしたeバイク(YAMAHA WABASH RT/ヤマハ・ワバッシュRT)による佐多岬→宗谷岬、日本縦断3700キロチャレンジ旅。今回は第5回目のリアルレポートです。

ポンギーの人たちと藤原さん
金沢でゲストハウス・ポンギーにお世話になった。オーナーのまさきさんと一緒に新鮮な海の幸を食べ、金沢も観光。体も気持ちもリフレッシュ

2週間ずっと調子が良かったので、このまま30日間連続で走ろうかと思っていたが、妻のヒロコから「いい歳のおっさんなんだから、調子にのらないで、1日くらい休んだ方がいいんじゃない?」と鋭いメッセージが度々きていたので、金沢のゲストハウス・ポンギーで1日休みを取ることにした。まさきさんと一緒においしい海の幸を食べたり、プチ金沢観光をしたり、みんなとおしゃべりをしてリフレッシュ。後半へ向けていい気分転換になった。

17日目。お世話になったまさきさんにお礼を告げて、ポンギーを出た。今日から後半戦、新鮮な気持ちでペダルをこぎ始める。目指すはバスや自動車、オートバイなどで波打ち際を走れる、国内で唯一の砂浜として知られている『千里浜なぎさドライブウェイ(ステージ09)』。オートバイが走れるなら、eバイクでも走れるはず、いや、ぜひ走ってみたい! ワクワクしながらペダルをこいだ。

金沢から約35km。2時間ちょっとでドライブウェイの入口に着いた。「さあー走るぞー!」と思ったら、まさかの事態が発生。なんと、悪天候のため通行止め! 嘘だろ。こんなにいい天気なのに!? これまで3、4回来ているが通行止めは初めて。台風直撃など、よほどのことがない限り走れると思っていた。どうも納得がいかないが、勝手に入るわけにもいかない。仕方なく諦め、ドライブウェイを後にした。

国道415号で羽咋から氷見へ抜け、高岡から国道8号に入る。射水の道の駅『カモンパーク新湊』でひと休み。道の駅はトイレもあるし、土地の名物も食べられるのでいい休憩ポイントとなっている。ちょうど昼だったので、富山湾の特産品、白エビのかき揚げうどんを食べることにする。衣はサクサクしているし、白エビの風味がたまらなくいい。腹ペコだったこともあり、あっという間に胃袋に消えていった。その後も調子よく前進。この日は富山県魚津市のネットカフェ泊とした。

千里浜なぎさドライブウェイの入口
楽しみにしていた、ステージ09『千里浜なぎさドライブウェイ』の入口に着くと、まさかの通行止め。こんなにいい天気なのに、なぜだー!?
道の駅
休憩場所として最適な「道の駅」。見つけるたびにトイレ休憩やドリンク補充、食事をしたり。さらに旅人たちの出会いの場にもなっている

18日目。明日にはステージ10の『滋賀草津道路・渋峠』を走りたいので、今日中にできる限り近くまで進んでおきたい。国道8号沿いのコンビニでサンドイッチと野菜ジュースを買い朝ごはんにする。駐車場で食べていると車の人が「自転車旅行ですか? いいですね♪」と声をかけてきた。ロードバイクを所有していて休日は、あちこち走りに行っているという。新潟へ向かっていると話すと「親不知の周辺はトンネルばかりだし、道が狭くてトラックが多いから、事故に気を付けてくださいね!」親切にアドバイス。最後に「本当に危ないので、テールライトは絶対に点けてくださいね!」緊張感ある言葉を受けて、背筋がシュッと伸びた。「ありがとうございます、気を付けます!」

そこからしばらくは田園風景が続いた。広々とした田んぼの向こうに、残雪の北アルプスが見える。北陸らしい、いい景色だ。国道8号をしばらく行くと『城山、横尾トンネル』自転車通行禁止の標識。「くそー、またこれかー」と思いながら、迂回路へハンドルを向けた。集落を抜け、踏切を渡ると、日本海が広がった。海沿いは気持ちがいい。さらに進むと『富山湾岸サイクリングコース』の標識が現れた。車がほとんど通らない、景色のいい海岸線の道が続く。いつもはトンネルが走れないと悔しいが、今日は幸運に感じる。

新潟県に入ると、いよいよ難関の『親不知』だ。ハンドルを握る手に力が入る。日本海に沿って断崖絶壁が続くため古くから交通の難所とされている親不知。道は一桁国道とは思えないほど狭く、暗いトンネルが連続する。確かに、自転車には緊張感のある道だが、思っていたよりも交通量が少なく、肩透かしを食らった気分になる。たまたまなのか普通なのかわからないが、車を気にすることなく走れるのは嬉しい。

国道8号
日本海沿いの国道8号は自転車通行禁止のトンネルがいくつかあった。迂回路にはローカル道もあれば、眺めのいい自転車道もあり楽しかった
新潟県入り
富山県から新潟県に入った。ここまでいくつ県境を越えただろう? 県名が変わるたびに日本縦断の旅が着実に進んでいることを実感する

アップダウンが多いが、eバイクならスピードを落とすことなく、安定したペースで進んでいける。順調に距離を伸ばし、『道の駅ピアパーク』に到着した。ここまでくればかなり安心。糸魚川は目と鼻の先だ。その後もひたすら国道8号線、日本海沿いを進んでゆく。路肩を走っていると『久比岐自転車道路』の文字。「えっ? 自転車道路があるの?」と思いながら坂を上ると、整備された自転車道が延びていた。しばらく行くと茅葺の屋根の趣のある『白山神社』があった。少し奥まった場所にあるので、自転車道を走っていなければ気が付かなかっただろう。

『久比岐自転車道路』は昔SLが走っていた旧国鉄北陸本線の線路の跡地を利用した道で、走っていると当時使われていたレンガのトンネルがあったりして面白い。昔のSLに乗ってい人たちはこの景色を見ていたんだなぁ…… そんなことを想像する。これもまたeバイク旅の特権だ。

道の駅ピアパークのミリオン
道の駅ピアパークのシンボル。全長6m、重量5トンもあるブロンズ製の海亀像『ミリオン』。道の駅には新鮮な鮮魚が並ぶおさかなセンターもある
能生白山神社
偶然訪ねた能生白山神社。本殿は室町時代の特色を残す国指定重要文化財。宝物殿にも重要文化財の木造聖観音立像や船絵馬などがある
久比岐自転車道路
旧国鉄北陸本線の線路跡地を利用した『久比岐自転車道路』には趣のあるトンネルがいくつもある。ぜひ走ってほしいサイクリングロードの一つ
道の駅うみてらす名立の海鮮丼
日本海の眺めが素晴らしい『道の駅うみてらす名立』で小休憩。遅めのランチ、海鮮丼を食べた。この内容で1000円以下は安いと思う

上越で日本海とお別れ。内陸へハンドルを向ける。時間は午後4時、できれば渋峠の入口、中野市まで行きたいが、まだ50km以上もある。飯山まで国道292号一本なので、わき目もふらず進んでゆく。すると予想外に、なぜか『上信越自動車道』の標識。あれ、おかしいな? と思いスマホで確認すると、途中の交差点で右折するところをまっすぐ来ているではないか! やっちまった。慌ててUターンをする。交差点からここまで5km、往復10kmも多く走ることに。「時間がないこんな時に……」と悔やんだ。

山の中で日が暮れる。小さな明かりを頼りに進んでいると、後続バイクが僕に追いついてきて、横に並んだ「何だ?」と思い顔を見ると、びっくり。兵庫に住む友人、ヨッシーじゃないか。「ええっ、どうしてこんなところに?」話を聞くと、僕の動向をSNSでチェック、このあたりを走っているんじゃないかと見当をつけてきたという。お互い走るペースが違うので、明日の再会の約束をして別れる。しかし、こんな夜の峠道で友人に会うとは夢にも思わなかった。

19日目。結局、中野市のビジネスホテルの部屋に入ったときには夜10時を過ぎていた。走行距離も173kmとこの旅で一番長い一日となった。その後SNSで連絡を取り合い、朝8時に市内のマクドナルドでヨッシーと無事再会した。ヨッシーはと付き合いは24歳のとき、北海道の旅で出会った。その時はふたりともオートバイ旅人だった。その後、数年は疎遠になったが、SNSを通じて再会。直接会うのは8年ぶりになる。せっかくだから2日くらい一緒に走ろうか、ということになった。

スクーターとeバイクでは走る速度が違うので、着かず離れずの距離感で渋峠へ向かった。今日の心配は天気。不安定な空模様で今日の予報は晴れ、曇り、雨、雷、ヒョウと何でもありの状態。いま走っている場所の空は曇りだけど、一部青空もある。同行しているカメラマンの平塚くんも「今日は落雷、ヒョウもありそうですよ……」と心配顔。

いつ降っても大丈夫なように上半身だけ先にレインウエアを着ておく。ヤマハ WABASH RTのアシストはHIGHモードに設定、少し重めのギヤでぐいぐい上ってゆく。国道292号には標高を示す標識が立っているのでわかりやすい。900m、1300m、1800mと順調に標高を稼いでゆく。

32km走ったところで1本目のバッテリー残量が0になった。路肩にバイクを止めて2本目に交換する。このペースで行けばあと30分くらいで渋峠に着くはず。息を整え再スタート、リズムよくペダルを踏む。「ゴロゴロゴロ……」遠くから落雷が聞こえる、雨が降り出す前に峠に着きたいので、一心不乱にペダルをこぐ。横手山ドライブインを過ぎ、いくつかのトンネルを抜けるとついにホテルが見えてきた。左手に『渋峠』の標識。やった! 峠到着だ。

写真を撮っているとポツポツと雨が落ちてきた。雷の音も近い。やばい、急げ。余韻に浸る間もなく、再び走り出す。峠と言いながら上り坂はまだまだ続く。雨雲から逃げるようにペダルをこいでいると、国道最高地点(標高2172m)の石碑が見えてきた。急いで記念撮影をしているとヒョウ混じりの雨が降り始めた。ひーっ。一刻も早く山を下りよう。ところがヨッシーの姿がどこにもない。百戦錬磨の男だ、適当に追いついてくると判断、ダウンヒルに突入した。

その後は、ヒョウを体に受けながら下ってゆく。天気が良ければ景色がいい場所に止まって、写真を撮るのだが、美しい景色も今日は雲に隠れて見えない。おまけに強烈に寒むく、指が思うように動かない。とにかくハイペースで下ってゆく。時間がたつに連れて徐々に雲は切れ、草津温泉に着くころには青空になった。草津温泉最初のコンビニで休憩しているとヨッシーが現れた。無事再会できてよかった。

そこからは嘘のような青空が広がった。国道145号で沼田方面へ向かう。ヨッシーから沼田の健康ランドに泊まるとメッセージが来たので、僕も後から行くと返信。7時過ぎに到着した。昔懐かしい雰囲気の健康ランドで、自転車も倉庫の中に置かせてくれるという。お風呂に入った後、大広間で一緒に夕ごはん。食べながらお互いの家族や仕事のこと、ヨッシーが自転車で走った南米旅のことなど、いろんな話をした。旧旅友と過ごす時間はとても穏やかな、いい時間だった。

渋峠突入前の藤原さん、平塚さん、ヨッシー
渋峠突撃3人衆。僕はeバイク、真ん中のカメラマンの平塚くんはヤマハセロー。右のヨッシーは原付スクーターと乗り物のまとまり感はゼロ(笑)
国道最高地点
ここが国道最高地点(標高2172m)。一見晴れているように見えるが反対側は雨雲が来ていて雷も聞こえるほどの悪天候。この後すぐに山を下りた
殺生河原
渋峠を越えて標高が下がると少しずつ雲が切れ、青空も見えるようになった。ごつごつとした岩場、荒涼とした景色が広がる殺生河原を行く
沼田健康ランド
原付スクーターで600kmも走り、長野まで会いに来てくれた心優しきヨッシー。沼田健康ランドで夕ごはんを食べながら自転車旅に話が弾んだ

■ここまで(19日間)の総走行距離:2278km

■今回の走行ルート

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