60歳を超えた夫婦がeバイクで日本一周の旅を始めた。妻ヒロコは生まれて初めての自転車旅、インドアで運動嫌い、途中でギブアップするかと思いきや、約3か月間をかけて東日本を走り切った。今年4月から西日本をめぐる旅、神奈川県、静岡県、愛知県、三重県、奈良県、大阪府へと進んで行く。
DAY116
大阪では北南米大陸の旅で出会って以来、20年以上の付き合いになる友人、ペーちゃん宅でお世話になることになった。ここ大阪で約束していたことがあった、それは同じ北南米大陸の旅のメキシコで出会い、親しくなったプロレスラー『ツバサ』との再会。
夕方、プロレス会場で激しい試合を観戦。大会の後、疲れているのにも関わらず少しだけ話ができた。肉体的には大変な部分もあるが、今はツバサに憧れてプロレスラーになった若者も現れ、とても充実しているという。僕より一回り下の50歳。プロレスラーとして若くはないが、経験値はピカイチ。第一線で張頑っている姿に刺激をもらった。
宿泊地:大阪府大阪市
走行距離:0km
総走行距離:5528.5km
DAY117
今日はペーちゃん家族と地下鉄で外出。天王寺へ行き、通天閣の近くのお店に入り、串焼きやどて焼きなど大阪の味を堪能した。新世界をウロウロした後、あべのハルカスへ。展望台は2000円もかかるので、節約のため無料で行ける最上階まで登り、大阪の眺望を楽しんだ。夕ごはんは1947年創業の味、阪急三番街でインデアンカレーを久しぶりに食べたが、やっぱり美味しかった。
宿泊地:大阪府大阪市
走行距離:0km
総走行距離:5528.5km
DAY118
大阪滞在の最終日はあまり動き回らず、ペーちゃんの家でまったり過ごした。ほとんど毎日自転車をこいでいるので、こういう日も必要。ヒロコは整体へ行き体をメンテナンス。僕は、部屋で旅ノートの原稿を書いて過ごした。粉物が多い大阪だが、たこ焼きを食べ忘れていたので、最後の夜はたこ焼きパーティーにした。タコ以外にもキムチ、ウインナー、チーズなどいろんなものを入れてクルクル。食べて作って喋って、最後の夜を思い切り楽しんだ。
宿泊地:大阪府大阪市
走行距離:0km
総走行距離:5528.5km
DAY119
出発なのに朝から雨。3日間、お世話になったペーちゃんにお礼を言って雨の中へ。今日の目的地は明石、ほとんど市街地走行になりそうだ。淀川に出ると川に沿って自転車道が伸びていたので、しばらくその道を進んで行く。雨のせいもあると思うが、大都会とは思えないほど静かだ。
「雨でもこんな道ならご機嫌だねーっ」なんて喜んでいたら、ゲートが登場。警備員が出てきて、自転車はそっちを通ってと指をさした。移動するとそこはポールの幅が狭く、サイドバッグが当たって通れない。困った。バッグを全部外す、いや、自転車を持ち上げよう。ふたりで「うぉーっ!」と気合いで自転車を持ち上げ、何とかゲートを抜けた。
国道2号をひたすら行く。尼崎、西宮、芦屋と市街地が続く。天気は徐々に回復、時々うっすら日が差すようになった。神戸で楽しみにしていたのが長田にある巨大な鉄人28号モニュメント。着いてみると商店街の近くの広場にあった。僕たちは「おっ、すごい!」と盛り上がったが、地元の人にとっては日常の風景、周りに子供たちは見向きもせず、ボールを追いかけて回していた。
予約していた西明石のホテルに嬉しい人が会いにきてくれた。1992年にアラスカで会った世界一周サイクリストの待井くんだ。2002年に日本で一度再会したが、それ以来。初めてヒロコを紹介する。居酒屋へ行き、アラスカの路上で会い一緒にキャンプしたことや温泉に入ったことを懐かしく話した。その後は世界の旅のこと、結婚、兵庫県への移住、いまの和菓子屋の仕事など、話題は尽きなかった。
宿泊地:兵庫県明石市
走行距離:62.6km
総走行距離:5591.1km
DAY120
昨晩はホテルに駐輪できず、西明石駅の駐輪場に停めることになった。防犯カメラがあるので大丈夫だろうと思っていたが、朝その姿を見えたときはほっとした。今日も朝から雨、そして寒い。トレーナーにレインウエアを着込んでもまだ足りない。4月下旬でこの気温、地球温暖化はどこへ行った?
今日の目的地は赤穂。国道250号をひたすら西へ。昨日に引き続いて市街地が続く。広い歩道に自転車用の車線があるので走りやすいのだが、場所によっては路面が激しく痛んでいてガタガタ振動。車道と自転車道を選びながら進んで行く。
午後1時過ぎ、今日のメインイベント『姫路城』に到着した。こちらに住むヒロコの友人うのちゃんと合流、一緒にごはんを食べた後、姫路城を案内してもらう。お城の中の見学は、雨は降り続いているし、レインウエアはかなり濡れているのでパスにすることにしたが、周りから眺めるだけでも、姫路城の大きさと美しさは感じることができた。
再び雨の中へ。相生辺りから民家が徐々に減り、緑が多くなってきた。休憩で『道の駅あいおい白龍城』に立ち寄ると、ロードバイクが2台停まっていた。話をすると「夫婦で日本一周か、いいですね〜羨ましいなぁ」「うちは絶対に無理だなぁ」と羨ましがってくれた。確かに、夫婦旅は車でも少数派、それが自転車となったら、行ってくれる女性は1万人に1人? いや10万人に1人もいないだろう。本当にヒロコには感謝、僕は幸せ者です。
小さな峠を越えると赤穂の町が見えてきた。午後6時半。日が沈む前に宿に着けた。雨走行で疲れ切っているので今日は出かけず、ホテルの1階にある中華料理店で夕ごはんにする。部屋に戻りシャワーを浴びると、すでに夜10時を回っていた。ベットに入ると一瞬で夢の中へ。
宿泊地:兵庫県赤穂市
走行距離:71.2km
総走行距離:5662.3km
DAY121
朝起きると、久々に青空が広がっていた。やっぱり晴れは嬉しい。国道を避けて川沿いのローカルな道を走っていると、元気に魚が飛び跳ねた。自転車を停めて川を覗くと、亀が泳いでいた。珍しいなと思いながら岸辺に視点を移すと、20匹くらいの亀が日向ぼっこをしていた。その光景にビックリしていると、亀も僕の姿にビックリ。亀たちは一斉に川へ雪崩れ込んで行った。その速さに苦笑い。こんなに速く動く亀を初めて見たぞ。
海沿いを走っていると複雑に入り組んだ入江がいくつもあった。どこも穏やかで波もなくまるで湖のよう。国道250号は車も少なく走りやすい。吉井川沿いを走っていると大きなお寺が目にとまった。訪ねると『裸祭り』が有名な西大寺(観音院)というお寺で、珍しく見学用の観客席があった。装飾が素晴らしい仁王門、バランスの取れた三重塔、大きな屋根が美しい本堂など、どれも見応えのあるものばかりだった。
広い河口に出ると堤防に沿って大きな網が突き出た小屋が並んでいた。ネットで調べると『四つ手網』とよばれるもので、部屋の明かりに集まった魚を巨大な網ですくい上げる漁があるらしい。とても雰囲気のある景色だったので写真に収めた。
児島へ向かって走ってゆくと大きな橋が現れる。児島湾大橋だ。自転車で渡れるようなので歩道を上ってゆくと、ロードバイクが一台。挨拶すると近郊に住む人で、ここがお気に入りのルートだという。この辺り、景色はいいし気候も温暖、山も海もあるし、少し足を伸ばせば歴史の倉敷や瀬戸内海の離島もある。岡山はサイクリストにとって天国かもしれない。
小さな峠を越えると児島にあるヒロコの友人の家に到着した。初めて会うのだが自転車旅の僕たちを温かく迎え入れてくれた。ありがたいことに数日滞在させてくれるというので、しばらく荷物を預けて、直島や倉敷など周辺を訪ねことにした。
宿泊地:岡山県倉敷市
走行距離:75.5km
総走行距離:5737.8km
DAY122
今日は空身の自転車で直島観光の予定。朝6時半に家を出て、直島行きのフェリーが出る宇野港へ向かう。約15kmあるのだが順調に進んだので、1本前のフェリーに乗ることができた。ヒロコは日本一周に出る前から直島へ行くのを楽しみにしていた。
まずはフェリーが到着した宮ノ浦港にある、草間彌生の作品『赤かぼちゃ』にご挨拶。次はすでにWEBでチケットを買ってある『地中美術館』へ。ここは一つの空間が有名なアーチストのアート作品になっている。足を踏み入れる度に現れる新しい世界、見るというよりも体感するアートだった。
『ベネッセハウスミュージアム』では絵画、彫刻、写真、インスタレーションを堪能。お昼ごはんは正反対に昭和の香り漂う民宿で天丼を楽しんだ。午後は本村エリアへ移動して『家プロジェクト』を見学。点在していた空き家などを改修、人が住んでいた頃の時間と記憶を織り込み、空間そのものをアート作品にしている家プロジェクト。特に歯科医院兼住居だった建物を使った作品はユニークで面白かった。
気がつくと帰りのフェリーに乗る時間が間近に迫っていた。楽しいと時間が経つのが早い。アートの島をeバイクでゆっくり回れて良かった。今回、時間が合わず見られなかった場所、作品がいくつかあるので、いつかまた訪れてみたいと思う。
宿泊地:岡山県倉敷市
走行距離:42.5km
総走行距離:5780.3km