eバイク旅ノート Vol.77 eバイク日本一周17「夫婦旅ついにゴール!東日本一周編完結!」

藤原かんいち&ヒロコ、夫婦ふたり合わせて123歳のeバイク日本一周。2023年6月に神奈川県の自宅をスタート。日本海へ出て信越、東北地方を北上して北海道を一周。フェリーで青森へ渡るとひたすら南下を続け、栃木県までやってきた。自宅まで残り約300km。3か月、長かった東日本の旅のゴールがいよいよ見えてきた。

DAY90

西那須野の朝、窓を開けると曇り空だが雨は何とか上がっている。これなら行けそうだ。今日の目標は茨城県筑西市。距離にして70km位だろうか。国道4号を南下するが、幹線道路ゆえ交通量が多く落ち着かない。車道を走れば追い越しのトラックがギリギリを抜いてくし、歩道を行けば路面はデコボコの連続でスピードが上がらない。そんな状況の中でもコンスタントに距離を稼げるようになったのは、自転車旅に慣れてきた証拠。ヒロコも旅人の顔になっている。

鬼怒川の近く。高根沢から国道408号にスイッチすると、車が減り、風景も一気にローカルになった。のどかな田畑と住宅地、北関東らしい景色が広がる。そろそろお昼ごはんと思っていたら、工業地帯に入ってしまい、食事ができそうな店が全くなくなってしまった。これはやばい。腹ペコになるとヒロコの機嫌が悪くなるので、その前に何とかしなくては。焦りながらスマホで検索、5kmくらい先にレストランがありそうなのでホッとする。そこからふたりのペダルをこぐ力が、何かに取り憑かれたようにアップした。

到着した店はファミレスと食堂を合わせたような、庶民的なレストランだった。ふたり揃ってハンバーグランチを注文。大盛りごはんだったが、中年夫婦とは思えない速度で平らげた。もう満腹です。再び走り出す。朝は涼しかったが、昼頃から天気が良くなり気温もぐんぐん上昇。気が付くといつもの灼熱地獄になっていた。コンビニで凍ったドリンクと水を買い、水が減ってきたら氷を買ってボトルに注ぎ、冷たい氷水をゴクゴク……。エアコンもなければ日陰もない自転車旅。飲み物で体を冷やしながら進んで行く。

今日の宿は筑西市下館にあるビジネスホテル。チェックインまで時間があるので、予定のルートから少し外れるが『道の駅グランテラス筑西』に寄り道することにした。かなり大型の施設で農産物直売所やレストランはもちろん、屋外ステージ、バーベキュー場、コインランドリー、スターバックスまである。しかし何より驚いたのが、北海道のコンビニ『セイコーマート』があったこと。「北海道と同じもの売ってるのかー?」「100円パスタはあるのかな?」興奮気味に入店。見覚えのある飲み物や総菜を見つけては「懐かしい!」「これよく食べたね~」夫婦で盛り上がった。

午後3時過ぎにチェックイン。とにかく今日も暑かった、エアコンの効いた部屋に生き返るよう。明日の朝食用に買っておいた道の駅のパンを、味見に少しかじると、これがおいしい。そのまま止まらなくなり、結局そのままそれが夕ごはんとなった。部屋の窓から遠くに筑波山が見えた。

宿泊地:茨城県筑西市
走行距離:74.6km
総走行距離:4374.0km

牛柄の郵便ポスト
西那須野で見つけた牛柄の郵便ポスト。生乳産出額全国2位、牛乳&乳製品なら那須塩原市ということで牛柄になったらしい。市内に5か所に設置されているらしい
国道4号
朝は曇り空だったが徐々に雲が切れ青空が広がった。しばらくは国道4号を南下。車が多いので歩道が広くて人がいない時は安全のため歩道を走ることが多かった
茨城県へ突入
茨城県へ突入。県境を越えるときはいつも嬉しい。これで14県目、東日本エリアでまだ走っていない都道府県は千葉県を残すだけとなった
筑波山
「西の富士、東の筑波」と富士山と並び称される筑波山。田園風景の向こうに聳える筑波山を眺めていると、いま茨城を旅しているんだと実感する
とよとみのむヨーグルト
北海道でお世話になったセイコーマート、久しぶりに茨城県で再会! セイコーマートブランド『とよとみのむヨーグルト』を飲んでしばし北海道気分に浸る

DAY91

天気予報では降水確率が低かったが朝起きると、どんより曇り空。いまにも降り出しそうだ。走り始めると案の定ポツポツ落ちてきた。本格的に降ってきたので久しぶりに雨具を出した。広げると折り目が固まっていてバリバリ。そしてちょっと臭い(笑)。全部着終えると、それだけでムシムシ暑い。走り出すと暑さがさらに増し、息苦しくなってきた。ここまで来たら苦行だー。

今日の目的地は千葉県の水郷佐原。江戸情緒あふれる古い町並みが残るところで、いつかヒロコを連れて行きたいと思っていた場所。それだけに気分が上がる。

土浦方面へ向かって国道125号を走っていると、偶然サイクリングロード『つくば霞ヶ浦りんりんロード』の標識を発見。入ると道幅も広くて本格的。この道なら車が来る心配もないし、自分のペースで走れる。ルンルン気分で進んで行く。鉄道の廃線跡に作られたサイクリングロードのため、勾配もカーブも少なく走りやすい。また旧駅舎を使った休憩所があったり、ホームが残っていたり、鉄道の面影を感じる場所があるのが楽しい。

10時過ぎ、土浦駅に到着。サイクリングロードのお陰でいいペースで進んでいる。ここから『つくば霞ヶ浦りんりんロード』の霞ヶ浦一周コース、湖畔の南側を走るルートへ入って行く。少し走ると霞ヶ浦総合公園の風車が見えてきた。2年前にeバイクで走った霞ヶ浦一周の記憶が蘇ってくる。あの時はバッテリー1本で135km走破。12時間近く走りヘトヘトになってこの公園にゴールした。夕日の中で見た富士山がきれいだったな……そんなことを懐かしく思い出した。

1時間後、大須賀津湖畔の展望台に立っていると連絡をくれた旅友達、ハセケンがバイクでやってきた。数年前、礼文島の桃岩荘でヘルパーをしていたときに会って以来なので5年ぶりの再会となる。10年前のバイク旅で礼文島と桃岩荘に魅せられてその後は毎年のように島通い、いつか移住したいと話すハセケン。礼文島と桃岩荘の話題は尽きなかった。

再びeバイクに跨ると雄大な霞ヶ浦を左手に眺めながら佐原方面へ向かった。今日は平地ばかりなのでバッテリーの減りを気にする必要もない。強力アシストが得られるHIGHモードを使ってガンガン進んで行く。古渡から霞ヶ浦を離れ、田園地帯を抜けて利根川へ出る、そこからは川沿いに延びる歩行者&自転車道路で東へ向かった。

4時過ぎ、佐原の宿『ホステルコエド』に到着した。充実したキッチン、ラウンジなど共有スペースも広く、部屋は和洋をミックスした感じでオシャレ。さらに嬉しいことにeバイクを室内に保管&バッテリー充電もOK。eバイク旅人大歓迎の素晴らしい宿。もちろんヒロコも笑顔です。

夜、夕食を食べに住宅街にある洋食屋に入った。メニューにインディアンライスという料理があったので注文してみる。出てきたお皿にはドライカレーの上に大きなポークソテーがドンと載っていた。見るからにおいしそう。ヒロコはイカフライ定食を注文したが、どちらも丁寧に作られていることが伝わってくる、おいしい料理だった。日本には隠れた名店がたくさんある。

宿泊地:千葉県香取市
走行距離:88.5km
総走行距離:4462.5km

偶然見つけたサイクリングロード
国道125号で土浦に向かって走っている途中、偶然見つけたサイクリングロード。このコースがあることを完全に忘れていたので、得した気分になった
筑波鉄道の廃線跡に作られたサイクリングロード
昔、土浦駅と岩瀬駅を結んでいた筑波鉄道の廃線跡に作られたサイクリングロード。かつて車窓の景色をいまeバイクから眺めていると思うと感慨深い
つくば霞ヶ浦りんりんロードの案内マップ
『つくば霞ヶ浦りんりんロード』案内マップで現在地を確認する。ここから土浦に出て霞ヶ浦(西浦)の南側の湖畔を走って千葉県香取市へ向かう予定
霞ヶ浦総合公園
霞ヶ浦総合公園。2年前に霞ヶ浦を一周したときは、2年後にヒロコとふたりでeバイクに乗って日本一周することになるとは想像もしていなかった
霞ケ浦
青空と頬に当たる風が気持ちいい。いつもよりも空が大きく感じるのは、霞ヶ浦が日本で2番目に大きい湖だから? さあ、今日の目的地まであと少し
ハセケンさんと
バイクで日本一周をした旅人で、礼文島にある桃岩荘のヘルパーでもある、友人のハセケンがバイクで霞ヶ浦まで駆けつけてくれた。元気をたくさんもらった
東洋軒のインディアンライス
佐原にある大正15年に創業された老舗の洋食店『東洋軒』で食べたインディアンライス。ドライカレーの上にポークソテー、ボリューム満点でおいしかった
ホステルコエド
佐原で宿泊した『ホステルコエド』。手前がラウンジで奥がキッチン。部屋は二段ベッドのドミトリー、ツインルームもある。古い町並みも徒歩圏内の好立地

DAY92

今日はホステルのデッキに座って朝ごはん。コンビニで買ってきたサンドイッチだけど、食べる場所が違うだけで贅沢に感じる。今日はヒロコの実家がある八千代市まで、距離的に近いので気分的にも余裕がある。まずは小野川に沿って続く古い町並みへ行き、eバイクを入れて写真撮影。橋の上から、階段の下から、アングルを変えて撮影。佐原の町はどこをどう切り取っても絵になる、素晴らしい場所だった。

その後、3kmほど走り香取神宮を訪ねた。関東地方を中心に全国に広がる香取神社の総本山で東国三社の一社としても知られる香取神宮。朱塗りの大鳥居をくぐると木々が鬱蒼と茂る参道になり、一瞬にして厳かな空気に包まれた。荘厳な拝殿の前に立ち、ふたりで静かに手を合わせた。こんな風に時間を過ごしたのは久しぶり、心身ともにパワーをチャージ、とてもいい時間になった。

再び佐原の市街地へ戻ると、利根川沿いに延びる歩行者&自転車道路へ入って行った。悠々と流れる川と河原、広々とした景色の中をいいペースで進んで行く。雲は多いが明るいので、雨の心配はなさそうだ。

川沿いをほとんど休むことなく30km走ると、印西から一般道路へ入る。ヒロコは早く実家に帰ってのんびりしたいので、ガンガン進んで行く。4時過ぎ、見慣れた景色が見えてきた。まずは実家の近くにある妹の家へ行きリラックス。夜は母親や兄弟、姪っ子など家族そろって夕ごはん。久しぶりの家族団らんを過ごした。

宿泊地:千葉県八千代市
走行距離:61.0km
総走行距離:4523.5km

ホステルコエド
荷物を整理してバッグに収納、キャリヤへ装着(パッキング)はルーティーン。これまで数十回、ほぼ毎日繰り返しているのでかなりスピーディーになった
佐原の町並み
利根川水運の中継基地として栄えた佐原。江戸情緒あふれる町並みが残っていて、日本地図を作った伊能忠敬が住んだ町としても知られている
小野川
小野川に沿って歴史ある建物が並ぶ『重要伝統的建造物群保存地区』。小さく見える橋は大樋から水がジャージャー流れるため『ジャージャー橋』と呼ばれている
香取神宮
関東屈指のパワースポットとして知られる『香取神宮』。楼門を抜けると見えてくるのが本殿・拝殿。趣のある檜皮葺きの屋根、各所の装飾も美しかった
利根川に沿って延びる歩行者自転車道路
香取市から印西市まで、利根川に沿って延びている歩行者&自転車道路で移動した。嬉しいことに歩行者も自転車の姿もほとんど見かけず、ほぼ貸し切り状態だった

DAY93

今日は朝から土砂降り雨、出発は明日にして、今日は一日休みにする。その後、千葉県は警報が出るほどの大雨になった。ほぼ一日、家の中でまったり愛犬や家族と過ごした。明日は天気が回復するようなので、明日一日頑張って走って神奈川の自宅にゴールしよう。

宿泊地:千葉県八千代市
走行距離:0km
総走行距離:4523.5km

DAY94

今日は千葉から東京のど真ん中を横断して、神奈川県相模原市の自宅まで走らなくてはならない。ほぼ全域が市街地、車や信号の数を考えると気が重くなるが、その先には東日本一周編のゴールが待っている。難関だけど、記念すべき最終日、ふたりらしく一日を楽しもう。

朝6時、みんながまだ寝てる時間に、静かに家を出た。霧の中を走り出す。ルートを自転車NAVITIMEに任せてみると、普通なら選ばないようなマイナーな田舎道や住宅街に連れて行かれる。これがなかなか面白い。しばらく進むと雨が降ってきたのでコンビニに逃げ込んだ。イートインスペースがあったのでホットスープを飲んで温まる。数日前まで凍ったジュースを買っていたのが嘘のような気温。季節はゆっくりだが着実に秋に向かっているようだ。

都内は人が多く、自転車も多い。子供を乗せている電動アシスト自転車も目立つ。子供、学生、社会人、年配者、いろんな人が自転車に乗っている。都内で長く勤めていたが、eバイクで走るのは初めて。東京駅、赤坂、青山、渋谷……お馴染みの景色が違って見える。

歩道へ行けば歩行者と自転車が大渋滞、車道を行けば路上駐車のトラックがいっぱい、どちらを選んでも思うように進まないのが都会。それでもこの難関を乗り越えればゴールだと思えばあまり気にならない。ひとこぎひとこぎ踏みしめるように進んで行く。

多摩川を越えて神奈川県に入った。サラリーマン時代に通勤で使っていた小田急線と並行する道を進んで行く。相模原市の標識を通過する、そしてついに、自宅が見えてきた。94日ぶりの我が家。やった、ゴールだ。ヒロコ、お疲れ様。さあ家に入ろう。

宿泊地:神奈川県相模原市
走行距離:86.6km
総走行距離:4610.1km

船橋市の橋桁の船のモニュメント
千葉県船橋市に入った。橋桁に船のモニュメント、近くの碑には小舟を並べて橋の代わりにしたことが「船橋」の地名の由来だと書かれていた
日本橋
『日本橋』には道路元標があり、日本全国の道路網の起点となっている。ちなみに東京まで○kmというのは、日本橋までの距離を表している
東京駅
eバイクで東京のど真ん中を走ることは滅多にない、せっかくなので有名な場所へ立ち寄ろうということで東京駅へ。知っている場所も自転車で訪れると新鮮に感じる
多摩川
多摩川を越えたら神奈川県。都心は人も車も信号も多いので思うように進まず、想像以上に時間がかかったけど、どうにか日中にゴールできそう
自宅にゴール
94日間、4610kmを走り、神奈川県相模原市の自宅に無事ゴールした。東日本一周はこれで完結。ヒロコは初めての自転車旅、ホントに最後まで頑張った
日本一周ルートマップ
日本一周ルートマップ

取材協力:
ヤマハ発動機
https://www.yamaha-motor.co.jp/pas/ypj/
セナブルートゥースジャパン
https://senabluetooth.jp/
ステムデザイン
https://www.stem-design.net
武田レッグウェアー
https://www.rxl.jp

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